真田 

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大学4年の夏 暑くて暑くて死にそうだった とにかく、一刻も早く建物の中に避難! と… この暑いのに、あの場所に人がいる 加賀美か? 死ぬぞ! ちょっと近づくと うわっ! 九条も居るじゃん! 九条が加賀美を、グイグイ引っ張ってる まあ、そりゃそうだ 死ぬわ ところが、九条は方向を変え、木陰へと向かってった はあ? 木陰じゃ無理だって! 俺もそろそろ沸騰しそうだけど って… 加賀美…泣いてる?! あれは…確実に泣いてる! 木陰で何か話してると思ったら 九条が、加賀美の両肩に手を置いて 何か…必死に…何か言ってる! 退散!! 九条の奴、何が、多分俺もそう…だ! 男同士の痴情のもつれ現場見せやがって! 今頃言い合ってんのか? それとも慰めてる? 九条が?加賀美を?抱き締めたり?キ… ヤメよう… この先は危険だ そんな衝撃的なもんを見せられた後から 九条の様子がおかしい 時々ぼ~っとしてたり 窓の外見たり… これは…別れたな いや...フラれたな 九条の肩をポンポンと叩く 「ま、九条はモテるから、すぐに次、見付かるさ。元気出せって」 「…真田。なんか、俺が彼女と別れたみたいな言い方だな?」 彼女じゃなくて 彼氏だけどな おぇっ 「今日、飲みに行くか?付き合うぞ?」 九条は、じっと俺を見た後 「今日は彼女とデートだから無理」 と、ぷいっと顔を逸らした ま、モテる奴ほど 別れたとか、フラれたとか 知られたくないよなぁ それも、男に… 「ぶふっ…」 「何?その気持ち悪い笑い」 「いや?…くくっ…何でもない」 「はぁ…っそ」 こいつは、全然おふざけに乗ってくんない 「皇、真田の脳ミソ新種のウイルスに侵されてるわ」 このモテ男が、男にフラれてやんの! 俺は、知ってるからね 「くくっ…くくくっ…」 「ああ...だいぶヤバいな」 そんな楽しい学生生活も、あっという間に終わり それぞれの研修先へと別れた 色んな医者に、看護師に、その他諸々に 怒られ、嫌味言われながら とにかく死に物狂いで必死に頑張った ああ…九条がこの期間を自分の病院で過ごしたくないって言ってた気持ち分かるわ そうして、ようやく少し落ち着いた頃 地元近くで、同期の飲み会があって ブラック過ぎる毎日を送ってた俺は 何とか休みを貰って参加した 九条も来ていて話をすると なんと、救命医から外科医に変更されてた 先の事、自分の親の病院の事、色々考えて、親とも話し合った結果らしい まあ、救命医なんて、歳取った頃にはヘトヘトだろうし 救急って、メチャクチャ金かかるから、なんかしょっちゅう上と揉めてるもんなぁ トップが救命とか向いてなさそう そうは言っても 研修では、ガッツリ救急にも行ってたもんだから 2人して盛り上がった これから、救急で有名な病院に就職予定の俺の話を、ほんの少し羨ましそうな顔で聞いていた やっぱ、御坊っちゃまって大変なんだ 久しぶりの同期と、あっちでもこっちでも、ブラックな苦労話をして、すっかり酔っ払って、店を出る時… 「あ?…九条~?どした~?」 皆、酒飲んで赤くなってんのに 1人青白い顔をしていた 「ああ…真田。俺、ちょっと用事あって、これで帰るわ」 「は~あ~?一次会で帰るだ~?」 「悪い…」 こいつ…具合い悪いのか? 「飲み過ぎたのか?」 「いや...大丈夫だ。悪いな。また連絡する」 そう言って、さっさと帰ってった 何だよ? これから、俺様の素晴らしい活躍ぶりを語って自慢してやろうと思ってたのに 二次会に行くと 「真田、真田」 「あ~?金平(かねひら)…かんぱ~い!」 「かんぱ~い!じゃなくて!」 「あ?」 「さっきさ、九条と話してたろ?何話してたんだ?」 「何って…二次会行かないって言うし…ふざけやがって...俺様の武勇伝を…」 「お前の話はいいんだよ!」 失礼な奴だな 「なんか、顔色悪いし…具合い悪いのか?って聞いたけど…大丈夫だって、しっかり歩いてたし…用事あるらしいろ?…俺様との飲み会の日に...用事入れるなや~!かんぱ~い!」 「ああ…もう。うるさいな!やっぱり顔色悪かったよね?」 「……だな?…くくっ…またフラれたりしたんじゃねぇの?ウケるわ~」 「ちょっと!ウケてないで、聞いて!」 「ああ~?なんらお前…全然酔っ払ってねぇな?」 「酔いが覚めたんだよ!その話をしたいの!」 「な~に怒ってんだ?金平」 俺が、散々酔っ払ってると、皇が登場した 「あ!皇!いいとこに!」 「何?」 「皇も、九条とけっこう仲良かったよな?真田に話聞こうと思っても、全然ダメなんだ」 「全然ダメって言うな!俺は、やれば出来る奴だ!」 「な?」 「ああ」
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