真田 

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本格的に働き出すと 皆、いつ家帰ったんだか、いつ寝たんだか分かんない様な生活で しばらく連絡を取り合ってなかった そのうち、九条が自分の病院に戻ったらしいとの噂が耳に入る すると、それから間も無く、皇が九条の病院で働いてるとの噂が耳に入る マジか そろそろ、色んな仕事押し付けられてきた頃 俺も九条の病院へと移った 九条は、ちゃんと大病院の御曹司君として見られてた が…あまり、羨ましいとも思わなかった それぞれ…というか、俺が1番忙しくて なかなか集まれないが 悲しいかな全員独身の俺達は、たま~に飲みに行った けど… 普通に笑って働いている九条に 今更俺達は、聞けなかった まあ、そんな風に生きていれるなら わざわざ話を蒸し返す事もない たまに病院で会っては話し 特に、俺と皇の間でもあの時の話が出るでもなく もう名前とか忘れてた そんな時、九条からの電話が鳴った 「九条だ。真田、悪いが1人連れてっていいか?」 「いいが…院内か?」 「そうだ。13歳の男の子で、皇の患者なんだが、過呼吸を起こして」 「過呼吸か」 「ああ。ただ、そのまま意識を失った。脈も呼吸も、しっかりしてる」 「大丈夫だ。連れて来い」 「ああ。頼む。今、エレベーターホールから向かう」 九条が皇と連れて来た男の子は 顔中涙まみれになっていた 今はぐっすり 一応ざっと診察と、採血くらいするか ん? 「この怪我は…最近か?」 「俺が縫ったんだ。綺麗だろ?」 どや顔 「はいはい、ちょっと診察するよ」 この男は、多分ほんとは 未だに救急をやりたいんだと思う 外科医なんだから縫い目綺麗でも当たり前だろ 自慢すんなや 「薬も飲んでるんだけどね。一応少しだけ、抗不安剤、点滴してあげようか。起きた時、少し位ぼ~っとしてても、パニックになるよりはいいだろ」 「皇の患者で良かったよ。13歳だろうと、小児の、しかもそういう分野は苦手」 「ちょっと色々複雑でね。ま、九条の方が知ってるけど、外で待ってるのも家族じゃないんだ。優しく話してやってくれ」 「失礼だな。俺はいつでも優しい」 「はいはい。俺は、外来に戻るわ。なんかあったら電話しろ」 「分かった」 複雑… 九条の方が知ってる 「皇指示の点滴もしたし、寝て起きたら帰れるだろ。知り合いなのか?」 「ああ…俺にとって…わりと大切な奴の子供なんだ」 奴… 人じゃなく... 「……その大切な奴は、外で待ってるのか?」 「……いや。今年の始めに交通事故で亡くなったそうだ。この子は…その現場に居たらしい」 「ああ…それで皇か。13歳じゃな…」 そう言って、傍の椅子に座りだす 相当大切な奴なんだろな なんか… 眼差しがもう...父親じゃね? そんな大切な…… あれ? こいつの大切な…… なんだっけ? あれ…加賀美 加賀美の双子の兄の… いや…失踪したし そういうんじゃなかったよな でも… 「頑張ってるよな…」 そう言って、その子の頭を撫でている いやいやいや お前…泣きそうじゃん え? あいつの子供なの? ってか…じゃあ… 今年の始めに……亡くなったそうだって… さっき…言って… そうだって事は…知らなかったんだ あんな泣かれる関係で 失踪されて なんかすげぇ落ち込んでて 立ち直ったかと思ったら そいつが亡くなってんの知って そいつの子供の面倒みてんの? どういう状況?? こいつの情緒大丈夫?! ポンッと九条の頭に手を乗せる 「何だ?」 不思議そうに見上げてくる 何だじゃねぇよ! 何で何も言わねぇんだよ 言えないのかもしんないけど 内容言わなくても 酒でも飲んで 馬鹿とか、あり得ないとか、何なんだ!とか 愚痴ればいいだろが とぼけた顔しやがって 「……いや…お前も、あんま無理すんなよ。外で待ってる人に説明して、連れて来る」 そう言って、手を振って待合室に向かった その、泣きそうな顔 何とかしとけ
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