皇 琉唯

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皇 琉唯

クォーターだというのに、祖父の血を色濃く継いだ フランスに居る時は、たいして気にならなかった 11歳で日本に帰国する 物心ついた時にはフランスだったので 初めて見る景色に 自分は相当異質な存在だと知った 皆が自分を見に来る意味が分かった だって、珍しいものでしかない 家では、よく日本語で話してたので、言葉の壁はなかったが 同じ同級生として 友達になんてなれそうもなかった 中学生になると 皆同じ色の同じ制服で 自分の異質さが際立った 勝手に寄ってくる女子達 勝手にひがんでくる男子達 この髪と、顔と、瞳の色が 勝手に皆をそうさせる 女の先輩に告白されて受け入れた 数日後、男の先輩に呼び出された 髪に黒のスプレーをかけられ 適当に切られた 5日で別れた 父は、心療内科医で 俺の様子がおかしい事に早々に気付いていて 時間を取っては、俺の話を聞こうとした けれども俺は、あまり話さなかった 父に話すのは 自分が心の病気だと言われてる様で 自分が弱いみたいで 話したくなかった 中3から、いわゆる親があまり付き合って欲しくないグループの人達とつるむ様になる 度々家を出ても、学校に向かわなかったり 学校帰り遅くまで帰らなかったり 親を心配させた きっとフランスに戻ったら こんな事気にせずに過ごせる その為に勉強だけは続けた 高校に入ると、自由な校風で 色んな色の髪 ピアスをしてる奴 制服の中も、人それぞれの色 少し…自分の存在が薄くなって嬉しかった 「皇も、帰りどっか食べに行かね~?」 たいして話した事もないのに誘ってきたのは 真田だった 別にたいして考えた様子でもなく たまたま、そこに居て目があったから誘ってみた そんな感じが楽で そこから長い付き合いとなっていく フランスに戻る その為に、どんな仕事をするかなんて決めてなかった 真田が親の影響で医者になると言う ある意味避け続けてきた心療内科医の父 だから、医者という選択肢は無意識に除外してた 真田の父親は麻酔科医らしく なんだか、しょっちゅう呼び出されるわ 休み返上だわ 定時になんて帰って来ないわ 最悪だと言っていた けれど、最悪な医者を目指している真田は それを楽しそうに話していた 少し…興味が湧いた 父に...初めて仕事の話を聞いた その時の父の顔と言ったら それはもう凄く嬉しそうだった 何故、どうして、どんな風に 大変な事 嬉しい事 俺は、徐々に医療の世界へと引きずりこまれて行った 気付くと、真田とどこの大学にするか 何科の医者になりたいか お互いの親から、どんな話を聞くか しょっちゅう、そんな話をしていた 俺の周りに面倒な事で声を掛けてくる奴は 居なくなっていた 結局、真田と同じ大学に通い出す 真田は救命救急を目指したいらしい 俺は…なかなか決められずにいた 華やかな外科系 どんどん需要が高まる内科系 救命救急は…向いてない気がする ある時… 「俺も、皇みたいな髪の色にしよっかなぁ。人生で1度くらい、派手な色にしてみたいしな」 真田がそう言ってきた 何度か言われてきた言葉 「…交換出来るものなら、交換するけどな」 何度か返してきた言葉 何でもないやり取り 「…髪の色で苛められたりしたの?」 気を遣うなんて一欠片もない質問に 「髪の色だけの問題じゃないけどな。俺は、こっちじゃ異質な存在だ」 素直に答えた 「…ふ~~ん?」 机に片肘をつき、頬を乗せて だるそうに、じっと見てくる こういう話の時 そんなに見てくるもんか? 「皇、精神科医になれば?」 「……いや。それはない」 「あ、そう」 「え?」 「ん?」 「いや...普通そこで、どうしてそう思ったとか、言うもんじゃないのか?」 「俺が言ったところで、お前にそんなつもりなかったら、意味ないだろ」 そりゃそうだけど… 「一応…念のため…参考に」 「話す程の事でもないけど。誰かに傷つけられた事がある方が、そういう奴らの気持ち分かるだろ。俺は、想像でしか分かんないから。それだけ」 「…ああ……そう…かもな…」 想像でしか... なるほど 俺がこれまでされてきた事 感じてきた事 それが、真田には分からない訳だ 何で傷つくかなんて人それぞれで どんな風に傷つくのかもそれぞれで 俺が分かるのは、ほんの少しだけど 少なくとも真田よりは分かる訳だ 「お前の、気を遣わないとこと、ゴチャゴチャ考えないとこに、救われる奴も居るかもしれないぞ?」 「馬鹿にしてんのか?!」 大学2年の飲み会で、真田が九条と意気投合した為、必然的に俺も九条と会う機会が多くなって行き 卒業する頃には、3人でよく飲みに行ってた 皆、それぞれの場所で研修を終え 就職前に、同期で集まった そして、あの話が出た 「その話してたら、九条がすげぇ食い付いてきて...まさか死んだりとかじゃないよな?って聞いてきた」 「もし、そういう関係じゃないなら…そこまで顔色悪くなるとか...なんか、失踪に関わってる...とかじゃないのか?」 「ちょっ…お前…その辺の奴じゃないんだから、滅多なこと言うなよ…加賀美だぞ?か・が・み」 「でも、だからこそだろ?そりゃ青ざめるわ。何かのキッカケで九条、相談に乗って、その時言った事とか...なんか思い当たる事あるんじゃないの?」 「…なんか、そんな気がしてきた。それなら、あり得そう…恐怖しかないけど」 結局、俺達に真相など分かるはずもなく その後俺達は、それぞれの場所へと散った
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