皇 琉唯

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そのうち九条が、自分の病院へ戻ったと噂で聞く 俺は、働きながら、やっぱり子供に寄り添っていきたいと考え 色々と勉強させてもらい、児童精神科医として数年が経ったある日 九条の病院で、児童精神科を開こうと思うが、どうかと声が掛かり 九条と同じ病院で働く事となる 当たり前だが、普通に医師として働き お互い歳を取って、ちゃんと医者として働いてる以外 特に変わってる様子は見当たらなかった そのうち、噂を聞きつけた真田も九条の病院へと来る あの頃の3人が、同じ病院 と言うか、九条の病院で働く事になるとは思わなかった もう…フランスに行く夢など、何処かに飛んで行ってた たまに院内で話したり、食事をしたり、ほんとにたまに、飲みに行ったり 真田は、いつもヘトヘトだったが たいして皆変わりない ある日、九条から連絡が入る 1人診て貰いたい子が居ると 翌日、診察の時、わざわざ九条が顔を出してった 複雑な事情があるという、その子は 13歳で、過呼吸発作を起こしたらしい とても素直な、可愛らしい子だった 俺の髪やら瞳やらを見て 幼い子供の様に きらきらとした目になっていた 見た感じ、悩んだり、落ち込んだりしてる様には見えない 敬語を使って話す、付き添いの人にも、無理にではなく、気を遣いながら話せている 発作の時の事も、ちゃんと話せてる 付き添いの如月さんの話を聞く 父親の死を目撃して1ヶ月 身寄りなし 父の知り合いの元へ来て その人の部下で知り合いが付き添い 13歳の子が1人だってのに 何処のお偉いさんだ? 確かに複雑 そして、過呼吸発作を起こす程の衝撃を受けてるとは思えない、落ち着き様 あの子自身が、自分の不安に気付いてない 少し… 時間かかるかな 外来診察が終わって、病棟へ向かう途中、九条に会う 「薬を処方して2週間後、受診にしたぞ。気になる事ある様なら、その前に受診させろ」 そう、九条に伝えると 「ああ…やっぱり父親の死が原因か?」 「まあ…そうだとは思うが、まだ他の原因も否定出来ないな」 だいぶ、深い事情知ってるんだな 「…治る…もんなのか?」 お前の子か? と、言いたくなる様な表情 「人それぞれだし、何とも言えないな」 「……そうか」 「…飲みにでも行くか?」 「いや...また今度にする」 3日後 朝から九条に呼び出される 昨日発作を起こしたと その後は、夜もぐっすり眠れてるとの事で 様子を見ろと言う 昨日の夜九条が、直接結君の様子を見に行ったらしい どんだけの関係なんだ? そして、再診 やっぱり結君は、元気にしか見えなくて 不安な事、怖い事等 周りの人に伝える様に伝えた そして、如月さんと話してると、九条から連絡があり、エレベーターホールへと向かう 結君は意識を失って倒れていた ちょっと脈は遅いけど、呼吸はしっかり 皆でストレッチャーに乗せて急患室へと運ぶ 九条…冷静だな 急患室で真田に説明 念のため点滴の指示 如月さん達に声を掛けて外来に戻る 出掛けに、チラっと見えた九条は もう父親の様な顔をしていた 結君が目覚めたとの事で 如月さんと外来へ向かう まだウトウトしている結君は それでも、しっかりと受け答えをして 「……皇…先生…の…」 「ん?」 「…声……」 誰に気にされた事もない 自分でも気にした事のない俺の声 結君は、聞くと落ち着くらしい 「……うん。気に入ってもらえて良かった」 もうすぐ中2 不思議な子だ 俺が自分の容姿で苦しんだ中学時代 この子は、親を亡くして苦しんでいる 本当に…色んな悩みを抱えた子が居るもんだ 如月さん達と待合室に出ると、更に2人 それに九条まで来た 後から来たうちの1人が 椅子に下ろされた結君を 大切そうに抱き締めた 高そうなスーツ 「……かが…さん…」 結君が、うっすら目を開けて 名前か何か呟くと 泣きそうな顔で 「ああ…大丈夫だ。休んでろ」 そう言って頭を撫でている 少し離れた所で 何か微笑ましいものでも見てるかの様な そんな眼差しで見つめる九条 名乗るに名乗れない叔父…なんだろうな かなりの溺愛っぷりだが ばれてないのか? 「如月さん、あの方が…?」 「はい。色々考えちゃって、名乗るに名乗れない、馬鹿な叔父です」 「…あそこまで想ってるのに...名乗れないのなら、だいぶ複雑で面倒な理由があるんでしょうね?」 「どうなんでしょうね…佐久間!」 如月さんが、結君達の傍に居た人を呼ぶ 仕事出来ますってオーラが凄い 「あの叔父さんの秘書で、私と同じく友人でもあります。佐久間、こちらが皇先生だ」 「初めまして、加賀美の秘書の佐久間です。結君が、お世話になっています」 「初めまして、皇……」 え? かがみ… 一気に忘れかけてた記憶が戻ってくる かがみ…加賀美? 「あの…何か?」 「あ…いえ。失礼しました。とんでもないタイミングで、仕事の事思い出してしまって…」 平静を装って佐久間さんと話す 待てよ そう言えば、あの叔父だという男 大学で見掛けた そうだ 加賀美の双子の片割れだ あの格好に秘書 こっちは弟か って、事は…… 「分かりました。お世話になりました」 俺の話を聞いた佐久間さんがお辞儀をして 「副社長、戻りますよ。結君は叶達に任せて下さい」 そう、加賀美に向かって言った すると、渋々結君を叶と呼ばれた男に譲り渡した 加賀美の副社長 間違いない でも、結君の苗字は朝比奈 どうなってる? 兄は生きてたのか? 他の兄弟の子? そんな事を考えてると、加賀美がこっちへ来た 「初めまして、加賀美です。あの子が、お世話になってます」 「いえ……」 そうだ この顔だ その子は、双子の兄の子なのか? 「?…あの…何か?」 マズイ 見過ぎた 医者らしく説明すると 「……分かりました。考えてみます。結の事…宜しくお願いします」 叔父らしく頭を下げた 九条が、あんなに色んな表情をして ここまで一生懸命になるなんて やっぱり双子の兄の子だろうか だとしたら 兄は生きてたけど死んだって事だ 仕事終わりに、真田に連絡する 真田! キャパオーバーだ 今すぐ来い!
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