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「お前!結君を養子にでもする気か?お前に子育ては無理だぞ!」
「そんな訳ないだろ。はぁ...どんな意図があるのか、彩仁は自分が亡くなったら、伊織の元へ行けと言ってたそうだ。全然連絡取り合ってなかったのに。結君は、伊織が彩仁のなんなのか知らないまま、彩仁に言われた通りに来た。だが、伊織は知っての通り、無口で無愛想で忙しい。しばらく顔すら見せなかったり…それに加えて彩仁との確執もあるものだから、結君に叔父だと名乗りもせず、中途半端なまま、如月達に面倒見させてきたんだ」
それは…
想像以上に複雑……
「あんだ?そいつ!他に結君面倒見てくれる人居ないのか?!」
「母親は3歳の時亡くなってる。どういった人かは知らないけど、伊織以外に親戚は居ないらしい。まあ…本当は、加賀美の家の人達皆親戚なんだろうが…一応、彩仁は牧師で教会で暮らしてたみたいだから、教会の人達がお世話はしてくれてたらしい」
「牧師…教会……あいつにピッタリ過ぎる!」
「結君は、教会の人達より、加賀美と暮らす事を望んでるのか?」
話を聞く限り…
結君の雰囲気は、父親の彩仁に似てるんじゃないかと思う
だったら、こんな都会の、加賀美の御曹司の元に居るより
何処かは知らないけど
教会の人達に囲まれて暮らした方が…
「…さあな。あの子は伊織に何かしたいらしい。彩仁が、ずっと大切だと言って、会わなかった伊織に興味津々だ。そして、何が出来るか考えてる。まあ…最近は伊織も、頑張ってるようだがな」
「難しいな。叔父だと名乗るかどうかは、周りの人達に任せると言ったんだ。フォローはするからと…」
「ああ…それでいい。おそらく伊織は、結君を加賀美に関わらせていいものか、悩んでるんだろう。彩仁が…もしかしたら伊織も…色々悩んだ原因だろうからな。俺達が決めれる事じゃない」
親戚の存在を知らないまま教会に戻るか
あまり笑わない叔父の元で
もしかしたら加賀美に関わっていくか
「ああ…どう転んでも、結君は大変そうだなぁ」
「しっかりフォローしてやってくれ」
「俺に出来る事ならするさ。加賀美 伊織は、どんな奴なんだ?」
「さあな。どう考えても、甥っ子を引き取るとか、あり得ないと思ってたんだが、最近、知らない伊織が見れて楽しいぞ」
「…ふっ…叔父さんも頑張ってる訳だ」
「九条!」
今、完全に寝てたよな…
「何だよ?お前はもう、黙って寝てろ」
「今度は弟か?!弟に手出すつもりか?!」
「お前の頭ん中は、どうなってんだろな」
「結君は…誰の子だ?結君…可愛いから……泣かせたら許さない……」
「なんか……かなり危ない発言残して寝たな」
「真田も心配してたんだよ。この分じゃ、明日何も覚えてなさそうだけど」
テーブルに突っ伏して、すやすや寝てる
「この馬鹿、このまま寝かせとくか。皇も泊まってくか?」
「冗談。ちゃんと自分のベッドで寝るよ。突然悪かったな」
「いや…お前に結君任せといて…話さないで悪かったな」
「ま、個人情報だからな。けど、結君を取り巻く複雑な環境が分かったよ。助かった」
「結君に…初めて会った時…熱で朦朧としてたのに、九条だと名乗ったらお礼言われたんだ」
「お礼?」
初めて会ってお礼?
「父さん、ありがとうって嬉しそうに話してたって、伝えてくれたんだ……そういう子なんだ」
「…俺も、声落ち着きますって褒められた。いい子だな。もう少し…悪い子になれればいいんだが…」
「真田に教育させるか?」
「こんな大人になったら困るだろ」
「ふっ…全くだ」
「ふっ…こいつは馬鹿なまんまだ」
冗談じゃなく
真田みたいに、誰かに気持ちぶつけられたらいいのに
真田みたいに、怒れたらいいのに
まあ…
それが出来ないから
俺の患者なんだけどな
ぶつけられる人が居ないんだ
加賀美が叔父と名乗ったら…
少しは変わるだろうか……
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