ミミズ

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ミミズ

「ふふっ」 「……ん?」 何の…声? 何か…腕の中に… 何か…抱いて寝たのか? いつもより心地好く眠れたのは… これのせいか… ……ん? 目を開けると… そうだった 結と寝たんだった す~す~ さっき…何か声が聞こえた気がしたが… もうこんなに明るい こんなに熟睡したのは、いつ以来か 「…父…さん…」 また…夢を見ているのか 俺の元へ行かせたはいいが 心配で毎日夢に、出て来てるのではないだろうか 「…バイ…バイ……蛙…」 蛙? 「ふっ…一体どんな夢見てるんだ?」 蛙を…夢に見るくらい見ていたのか… 佐久間が撮った写真では 教会の裏は山 周りは田んぼだった 彩仁(あやと)が、喜びそうな景色だと思った 「伊織(いおり)、見て見て~」 「何?あや…うわぁっ!」 「立派なミミズ~」 「なんでミミズなんか…」 小枝の先には、ビッグサイズのミミズ 「嶋じぃが、ミミズが沢山居る土は、いい土だって言ってたんだ!こんなにおっきかったら、きっと凄い働き者だよ」 「話してないで、早く戻してよ」 「うん。バイバイ、ミミズ」 ミミズが、土の上を這っていく 「彩仁(あやと)は嶋じぃ好きだね?」 「だって、ここのお花全部嶋じぃが咲かせてるんだよ?凄くない?」 「凄いけど…服汚れるから、あんまり近づくんじゃないって、言われてるでしょ?」 「……僕も、嶋じぃみたいにカッコいいの、着れたらいいのに」 彩仁が、凄く悲しそうに言う 「カッコいい…かな?」 「カッコいい!嶋じぃみたいの着て、思いっきり土とか触って、沢山お花咲かせてみたい!」 「無理だよ。そんな事したら、皆にびっくりされて、もうお庭で遊べなくなるかもしれないよ?」 「…そうだね」 彩仁はお庭が大好きだから… 「…いいな。僕よりミミズの方が、嶋じぃのお手伝い…沢山出来てる」 「彩仁(あやと)……ねぇ、またお花の名前教えて?」 「うん!あっち行こ!」 「うん」 とにかく、花やら草やらが好きで 俺は苦手だった虫を見付けては 嬉しそうに見せてきた 山と田んぼに囲まれてたなら さぞかし沢山の虫にお目にかかれた事だろう 「…ん……ん...」 ん? また寝言か? 「……んんっ……はぁっ…ん!…」 違う うなされてる 「結」 「…ん…んんっ…」 「おい、結」 起きない 「結!」 耳元で叫ぶと目を覚ました 「か…加賀美さん…」 「大丈夫か?うなされてたぞ?」 「あ...なんか…怖い夢…」 まだ...寝惚けているのか? 「もう少し、寝るか?」 「いえ…もう目が覚めました」 少し…震えていたぞ? 「そうか。だが…もう少しだけ、こうしてろ」 「え?」 安心出来る様に抱き締めてやる 「よく…怖い夢を見るのか?」 「いえ...たまに」 「彩仁(あやと)とは、よくこうして寝てたのか?」 「父さんが、俺と寝たがったので…さすがに中学生になったらな…って、寂しそうに言ってたので、中学生になってからも、たまに眠れないって言って、父さんのとこ行くと、喜んで一緒に寝てました」 息子に気を遣われていたのか? 「何だ?それは?彩仁の方が子供だな」 「俺は…母さんの記憶があまりないから、そんなでもないけど、父さんは…母さんが早くに死んじゃって…凄く寂しかったんだと思います」 「…それを子供に心配されてるんじゃ、父親失格だな」 「父さんは…何に対しても、愛情が強いんです。きっと…母さんを失った悲しみは、凄く深かったと思います」 記憶があまりなくとも 母親が居ない寂しさはお前もあっただろう ゆっくりと頭を撫でる 「お前は…父親のそういう気持ちを知ってて、負担ではなかったのか?」 「全然。だって、俺に対する愛情も凄かったから。俺も父さんの事大好きだったし。父さんが喜んでくれるなら、何だってしてあげたいと思っ…てたので……」 彩仁… 聞こえてるか? そんな褒美も受け取らないで 何故こんなにも早く逝ったんだ? 「結…家の周りには、虫が沢山居たのか?」 「え?はい…バッタとか、コオロギとか、キリギリスとか、カマキリとか…」 「そんなに沢山居たか」 「はい。チョウチョも、トンボも色んな種類が居て、アメンボとかオタマジャクシも、よく見に行きました」 「彩仁も一緒に見てたのか?」 「はい。家の周りにいっぱい居たし、近くの田んぼのお手伝いに行ってたので、そこでも沢山」 「田んぼの…手伝い…」 あの彩仁が… 「ふっ…」 花畑どころか、田んぼの手伝いをしていたか 「それは…さぞかし喜んでたろ」 「はい。俺も楽しかったけど、父さんが誰よりも楽しそうでした」 「ははっ…そうだろうな」 「…加賀美さんと一緒に居た時も、父さん田植えとか、してたんですか?」 「…いや…そんな環境が近くにあったら、彩仁は飛び付いていたかもしれないが…実際手伝う事は出来なかっただろうな」 田植えをするくらいなら、それに使う商品開発でもしろとか…言われそうだな 「…加賀美さんと、父さ…」 コンコン 「副社長。お目覚めですか?」 「ああ」 「失礼しても?」 「構わない」 ガチャ 「おはようございます、副社長、結君」 「おはようございます、佐久間さん」 「一緒に寝たのが副社長で、眠れましたか?」 副社長で? 「はい!ぐっすり眠れました」 「そうですか?」 「…はい…?」 何故、疑問を抱く 「結~!」 「うわっ!叶さん、おはようございます」 叶が、佐久間の後ろから現れて、結に飛び付いてきた 「おい、叶!危ないだろ!」 「結~!こいつじゃダメだろ?今晩は、一緒に寝ような?」 こいつ? 上司に向かって、こいつ?! ダメだとは何だ?! 「え?ダメじゃないです…叶さん、あの…」 「俺はダメ~!結が居ないと眠れない~!」 「叶!離れろ!結が潰れ…」 「あ…」 「わぁっ!」 叶が結ごとベッドに倒れ込んで… ゴンッ ヘッドボードに…頭… ドサッ
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