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大きな1歩
そうして
「うわぁ…すご~い…」
「良かった。ここ、色んな花植えてて、ほんとは外で咲いてんのがいいみたいなんだけど、流石にこの時期はな」
「ちょっと、じっくり見てもいいですか?」
「もちろん」
「わぁ…梅だぁ。結構咲いてる」
「ここは、毎年人気スポットらしいよ」
「向こうまでずっとだ…」
「結が居たとこにもあった?梅の木」
「少し離れたとこに…」
「そっか。ゆっくり見ておいで」
「田んぼだ~!」
「ははっ…冬の田んぼ見てどうすんの?って思ってたけど、嬉しいんだ」
「うちの近くに、ヒデじぃとヨネばぁって、おじいちゃんとおばぁちゃんが居て、毎年父さんと手伝ってたんです」
「可愛い名前だな」
「…なので…思い出します…色んな事…」
「…そっか」
コンコン ガチャ
すっかり結が眠った頃、透哉が来た
「結君、寝てる?」
「寝てる。今日も1日楽しそうだったよ」
「そっか。良かった」
「…そっちは?」
「ふぅ...調べ終わって、佐久間に資料渡して来たよ」
「お疲れさん」
「疲れた~。叶と代わりた~い」
「絶対やだ」
「…ん...?ん、ん…」
「…っと…」
ちょっと体を起こして話してると、結が擦り寄ってきたので、体を戻す
「…父親と一緒に、近所の田んぼ手伝いに行ってたらしいよ」
「…そうか…叶…彩仁が亡くなったのは…雨の日だった。結君が発作を起こした時…2回とも雨が降ってた」
「……まだ、こんなちっさいのにな。どっちか残しといてやれよな」
頭を撫でると
ほんの少し嬉しそうな顔
「結君…救急隊の人…声掛けても、全然動けなかったらしい……ずっと…彩仁見てたって」
「どんな奴が轢いたんだよ」
「80代の爺さん。最近物が見えづらくて、翌日眼科受診しようと思ってたそうだ」
「…見えづらいのに、雨の日運転すんなよ」
「いつもは、近くの店行ってたらしいんだけど、死んだ奥さんの命日だから、好きだった和菓子屋行こうとしたそうだ。途中、右折するのに信号黄色で、焦ってアクセル踏んだらスリップして、歩道近くに居た彩仁の方に…突っ込んでったらしい。爺さんも…結構な怪我したみたいで、まだ入院してるって」
そんなの…
関係ないだろ
「……あっそ。どんな理由があっても、そいつが、どんな辛い事になってようと、結には関係ないよ。結の…たった1人の家族奪って、こんなに苦しめてるんだから」
「……そうだね」
「透哉…ご苦労だったな」
「佐久間…伊織…ほんっと疲れたよ~。俺、警察でも探偵でもないんだからな」
「如月のネットワークがあるだろ」
「伊織…俺が如月グループの会長か社長に見えるか?」
「叶…結は変わりなかったのか?」
「冬の、何もない田んぼ見てはしゃいでた。ヒデじぃとヨネばぁの田んぼ、父親と手伝いに行ってたらしいよ」
「はぁ…そうか」
心配なんだろうけど
煩く言わなくなった
ちょっとは、まともになったかな
「明日の受診は、透哉も付いてくのか?」
「勿論!ここんとこずっと結君と居なかったんだから!あと…一応、皇先生にも、分かった事報告してくるよ」
「そうだな…はぁ…結の…学校にも1度連絡するべきだろうか」
「そうですね。予定のないまま来てしまったでしょうから。明日連絡しておきます。叔父と伝えても?」
佐久間の質問に少し間を置いて
「…そうでなければ、怪しいだろ」
「遠い親戚でも、親しい知人でも、学校側が調べたりする事はないと思いますが?ただし、後見人の様な存在が居た場合、耳に入ると、かなりまずいでしょうね」
「居るのか?」
「さあ?調べましょうか?」
「……………」
お~い
イライラすんな
さっさと名乗れよ!
「いや…透哉。明日、医者に確認してくれ」
「何を?」
「今の状態で…俺が叔父だと名乗っても大丈夫なのかと」
「えっ?」
「周りから聞いて知るくらいなら、直接話した方がいいだろ」
「…そりゃそうだ。分かった。聞いてみる」
伊織が結の頭を撫でる
「うなされてないか?」
「大丈夫。毎日色んなとこ行って、走り回ってるから、熟睡だ」
「走り回ってるのか?」
あ…ヤベっ
「少しだけな」
「ふっ…中学生にもなって、走り回る奴が居るか?」
怒ってない
笑ってる
不気味…
「ずっと体動かしたかったんじゃない?」
「…そうか…悪い事をしたな」
不気味過ぎる…
ってか…
そんな顔出来んのな
「さて、そろそろ行きましょう」
「じゃな、叶。結君よろしく」
「おお」
「頼んだぞ。結…ぐっすり眠れ」
最後に優しく結の頭を撫でて、伊織も出て行った
「結…良かったな。お前の叔父さん、ようやく名乗る気になってきたみたいだよ?難しい事色々あるけど、自分の叔父さんが居るって、傍に居れるって、安心するに決まってるよな?」
こんな時間かけないで、さっさと名乗れよ!
って思うけど
まあ、彩仁って奴と、なんか複雑そうだし
その子供ってのも複雑なんかな
「おやすみ…結」
こんな可愛いのと、ずっと一緒に居れるなんて最高じゃないか
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