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エレベーターホールに差し掛かり
そのまま食堂へと向かおうたした時
「結?」
叶の声に振り向くと
結君が、立ち止まっていた
「ん?…結君?」
視線の先は…
おそらく退院した女性と、その夫と子供
知り合いなのか?
カン!カラカラカラ
「あっ!落ちちゃった…」
表情が…
「ははっ。大丈夫。父さん取ってくるな」
これは…
「…っ…だめっ……っ…」
やっぱりこれは……
「結?大丈夫?」
院内用のPHSを取り出す
「…もしもし、皇。今エレベーターホール近くだが…多分結君、発作を起こし始めてる…」
「……っはっ…やめっ……はっ...はっ…」
「結…大丈夫だよ。結…」
「…ストレッチャーでも車椅子でも持って来てくれ。ここで寝かせる訳にはいかないからな。とりあえず急患室連れてく」
「はっ…あっ...はっ...うっ…~~っ…!」
「結…大丈夫だよ」
何か見えない物を見ている様な…
「うっ……ひ~~っ…はっ…はっ…」
「叶…そこの椅子に座らせよう」
叶と椅子に座らせる
何かが見えてるからか
苦しいからなのか
涙を流してる
「…あっ…はっ...ひ~っ…ひ~~っ…!」
「結、息ゆっくりだよ。ゆっくり」
叶が結君を落ち着かせる様に
手を握って声をかけるが…
まるで叶は見えてない様だ
「はっ…はっ…うっ…ひ~~っ…!はっ...」
「結…大丈夫。大丈夫だよ」
「九条!」
「おお…診察中に悪い」
「結君!」
皇と一緒に如月も到着した
「今、ストレッチャー持って来てくれるから。結君、ゆっくり息しような?」
ガラガラガラガラ
「ストレッチャー持って来ました!」
「ひ~~っ…!ひ~~っ…!」
皆でストレッチャーに乗せようとしたところで...
結君は気を失った
「結!」
「結君!」
「結君、ちょっと見せてね」
皇が脈と呼吸を確認して、ストレッチャーに乗せている間に、救急科の医者に電話しておく
「九条だ。真田、悪いが1人連れてっていいか?……そうだ。13歳の男の子で、皇の患者なんだが、過呼吸を起こして…ああ。ただ、そのまま意識を失った。脈も呼吸も、しっかりしてる……ああ。頼む。今、エレベーターホールから向かう」
一通り全身状態をチェックして、皇に言われた通りの点滴を始めたところで、真田が話し掛けてきた
「皇指示の点滴もしたし、寝て起きたら帰れるだろ。知り合いなのか?」
「ああ…俺にとって…わりと大切な奴の子供なんだ」
「……その大切な奴は、外で待ってるのか?」
「……いや。今年の始めに交通事故で亡くなったそうだ。この子は…その現場に居たらしい」
「ああ…それで皇か。13歳じゃな…」
理不尽な死なんて、飽きるだけ見てきたけど
彩仁が原因で、彩仁の子供が苦しんでるとか…
なかなか…くるものがあるな……
結君の傍の椅子に座る
空やら植物やらを見て幸せそうにしてた彩仁
息子を1人になんて…
自分のせいで苦しませてるなんて…
きっとまた…
1人で泣いてるんじゃないか
「頑張ってるよな…」
結君の頭を撫でる
彩仁の元で育った
彩仁と同じ綺麗なものを持った子
大切な人と別れるのは…
俺達以上に辛いはずだ
大丈夫だ
お前には何もしてあげられなかったけど
息子の為に出来る事があるならするさ
ポンッ
?
真田が俺の頭に手を乗せる
「何だ?」
「…………」
何も言わず、じっと見てくる
?
「……いや…お前も、あんま無理すんなよ。外で待ってる人に説明して、連れて来る」
そう言って、俺の頭からどけた手を、ヒラヒラと振りながら去って行った
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