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時間がない。
余裕もない。
そんな中現れた、作業員。
何故、一人だけ逃げ遅れてしまったのか。
「何でいるんだよ、オッサン!」
俺は迷った。
作業員を助けたら、怪獣に追いつかれ、踏み潰される。
しかし、怪獣を倒すことに専念したら、確実に作業員は死ぬ。
どっちだ。
どの選択肢が正しい?
どの選択肢も命がけ。
地球の運命を左右する、重大な選択を今、こんなにちっぽけな俺が迫られている。
(この人ひとりの命で、大勢の命が救われるなら……)
ふと、『悪い考え』が過ってしまった。
「……馬鹿野郎! そうじゃねぇだろ!!!」
俺は思い切り自分の顔面を殴った。
手加減なしで殴ったので奥歯が一本、折れた。
「犠牲なんて、一人たりとも出したくねぇんだよ! それが俺たち地球防衛軍の、そもそもの使命だろうが!」
俺は、作業員のもとへ戦車のハンドルを切った。
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