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「斉藤! そっちまだ汚れてるぞ!」
俺に飛び交う怒号。
別に俺が悪いわけじゃないのに、まだ建物に怪獣の体液が残っていることに叱責を受ける。
ギャラクシィマンと怪獣の闘いは、場所を選ばないし昼夜も問わない。
そして、いわば死闘。
生きるか死ぬかの戦いを繰り広げるわけだから、なりふり構ってはいられない。
怪獣の現れた場所から、半径10キロ以内が避難区域となるのは、そう言った理由も含まれる。
人類を守るために怪獣と戦う、ギャラクシィマン。
しかし、そんなギャラクシィマンも、その場所がどんな場所なのか、その建物が人々にとってどんな思い入れがある建物なのか、そんなことまで考えて戦わない。
故に戦った場所は、廃墟と化す。
崩された建物。
怪獣の破片が飛び散った建物。
怪獣の破片によって壊れた建物。
俺たち地球防衛軍の仕事は、ただ怪獣に爆撃を加えるだけではない。
戦いの後、荒れ果てた街を『片付ける』のも立派な仕事なのだ。
「あ~、この写真立て……まだきれいだな。あとで持ち主、探すか。」
思い出の残った家を失った人たち。
「このトロフィー……は修復出来ねぇか。」
努力の結晶を失ったひとたち。
「怪獣なんて、来ないのが一番いいんだよ。」
済し崩し的に就いた、地球防衛軍と言う職業。
俺は、この職業に誇りなど持ち合わせていなかった。
そう、この時までは。
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