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「十年前に約束したの……大きくなったらまたここで会おうって。この木箱のオルゴールを渡すために……小学校の頃にあたしが一番仲良かった千冬、覚えてる?」
春一はしばらく考え込んでから思い出したように頷いた。
「あぁ、あの色白のちっちゃい子か?」
きっと春一の思い浮かべている子は千冬で間違いなさそうだと、頷いた。
すると、春一がスマホに目を落としてスクロールを始める。
「光夜の家ってさ、食堂やってなかった? 調べたら出てくんじゃねぇ? ここに来たって事は、もしかしたら実家にいるのかもしれないし」
手がかりを探してくれようとしている春一を見て、先ほど見た名前と電話番号の書かれた紙のことを思い出した。
「……お姉ちゃんだ」
「え?」
「お姉ちゃんが、光夜くんの電話番号知ってる!」
「はぁ?」
わけの分からない顔をする春一を気にせず、あたしは急いで二階に駆け上がった。そして、勢い良くリビングのドアを開ける。
「お姉ちゃんっ!!」
リビングの中にはもう誰もいなかった。さっきまであった姉の仕事用カバンも、カメラも置いていない。
「アゲハならまた仕事入ったって、出てったよ」
一階から上がって来た青ちゃんが教えてくれた。一気に希望を失い、がっかりしてソファーに座り込んだ。
「……今お姉ちゃんに電話したら迷惑だろうし、今日はもういつ帰ってくるかも分からないし」
「なずな、オルゴールはまた作ってやるから」
「……でも」
優しく頭を撫でてくれる青ちゃんに泣きそうになっていると、一階から春一の声が聞こえてきた。
「なずなー! 光夜の居場所分かったぞー!」
すぐに立ち上がって階段から下を覗き込んだ。スマホを片手に掲げて春一が笑う。
「光夜の実家に電話したら繋がって、おばちゃんに聞いたら、光夜、今東京にいるみたいだ」
「東京……?」
千冬への繋がりが、徐々に近づいていく。
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