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第四章 手がかりは
暑さに寝返りを打ちつつ、考え事をしていた。
青さんが俺のために用意してくれた部屋の中には、布団一式とテーブルが置いてあった。ついさっきまで動かしていたパソコン。何冊かの小説がテーブルの上に無造作に置いてある。
手を伸ばして届く距離にあった一冊を、手に取った。パラパラと、別に読むわけでもなくページを進めていく。やがて、最後までめくり終えると、ため息を吐き出しながら後ろに倒れ込んだ。
和室の畳の匂いがする。久しぶりに感じたな。小さい頃は当たり前のように畳の敷かれた部屋で過ごしてきていた。最近はフローリングとカーペットの床に慣れてしまい、しばらくこの匂いを忘れていた。
どうしようもなく、懐かしいと同時に、寂しさと苦しさが胸に渦巻いてくる。本を開き顔を覆った。溢れ出る涙を止めることができなくて、流れ落ちていくのもそのままにした。
先ほどから、パソコンの画面の原稿は真っ白なまま、ただ光だけを放っていた。
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