第四章 手がかりは

3/6
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
*  春一のおかげで光夜くんの居場所が分かったけれど……東京にいるなんて。そりゃ、行けない距離なわけじゃないし、お金さえあれば行こうと思えば行ける。カウンターに腰かけて、あたしは頬杖をついてため息を漏らした。 「……なずな、一緒に探すか?」 「……え」  隣にいた春一が心配そうな顔であたしを覗き込んだ。 「俺別に暇だし、大事なもんなんだろ? それに、光夜に久々に会って話してみたいしさ」 「……春一ぃ、あんた、いいヤツじゃん」  春一の思いがけない言葉に嬉しさが込み上げる。 「やっさしぃ~! シュンくん。じゃ、なずなを頼んだよ! 俺はこいつらを可愛がらないといけないからね」  青ちゃんは近くの棚を愛おしそうに撫でながら、鼻歌まじりに歌いだす。そして、お店の隣のリメイク部屋へ店内の棚や彫刻達を慎重に運び始めた。 「なずな、夏休みやるよ。今日からこいつら仕上げるのに当分俺が店にいるし、店番別にいらないからさ」  軍手をはめて、頭にタオルを巻き、完全に仕事スタイルの青ちゃんはあたしにウインクして、パタリと部屋に消えていく。 「……せ、青ちゃん。ありがとうっ!!」  張り切って大きな声でお礼を言うと、笑いながら「おぅ!」と青ちゃんの返事が部屋の奥で聞こえた。 「春一もありがと! 頑張って探そうねっ」  両手をぎゅっと握り、握手をする。すぐに準備しなきゃと階段を駆け上がる足を、一度止めた。 「ねぇ、春一! 春一、仕事ある、よね? 大丈夫なの?」  振り返って、階段から身を乗り出したあたしは下にいる春一に確認するように聞く。 「……あぁ、大丈夫だよ。気にすんな。実は俺も夏休み」 「ほんとっ? 良かったぁ、じゃあよろしくね!」  部屋に戻って、充電していたスマホを手に取り画面を眺めていると、ふと思い付く。 「そう言えば、春一の連絡先知らないな」  すぐに部屋から出ると、ちょうど入れ違いに春一が隣の自分の部屋に入っていった所だった。ドアを軽くノックしてから「入るよ~」と、返事も待たずに勝手にドアを開けた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!