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「……寝るの?」
目を閉じてしまった春一に聞いても返事はない。あたしも真似をして、春一の隣に寝転がってみた。
窓の外、木の葉の間からキラキラと陽の光が溢れる。静かな部屋の外でセミの忙しない声が鳴り響く。目を閉じて、外の音だけに耳を傾ける。まだ明けきらない梅雨の湿った空気と暑さの中に、時折爽やかな風が体を通り抜ける。
この感覚が、なんだか懐かしい。
「なんか、懐かしいな」
眠ってしまったのかと思っていた春一が言葉を発した。
「……うん。あたしも今、そう思った」
幼い頃は、よくこうして二人でお昼寝していた気がする。夏休みは海や裏山や、姉と青ちゃんと春一と、たくさん遊んだ。日焼けは毎年恒例だった。
「春一、あたし千冬の事、ずっと迷ってた」
寝転がったまま、あの頃のことを思い出していた。
「約束は、小学校の頃の話だよ。あたしはこの場所にずっといたから覚えていたけど、千冬は覚えてくれているのかなって。離れてしまって、環境も変わって、忘れてしまっていないかな……って」
込み上げてくる不安が溢れてしまわないように、額に手を当てながら弱々しく言葉にした。
「……千冬、来てくれるかな?」
「きっと、大丈夫だよ。とりあえずさ、光夜から木箱取り返さねーと!」
隣で片腕を天井に向けて突き上げる春一に驚いた。溢れ出そうになった涙が、止まってくれた。気合いを入れる春一に、嬉しくなった。
「……そうだねっ! まずは木箱を取り戻すぞー!」
あたしも春一の腕に重ねて腕を突き上げた。気合を入れて「おーーーーっ!」と叫ぶと、二人で笑い合った。
千冬に、早く会いたい。会って、いろんな事を聞きたい。
離れていた間、どんな学生生活を送っていたの? 今は、何してるの? 働いてる? 大学生かな?
千冬は色白でちっちゃかったから、大人になった千冬を想像してみたりもしたけど、あの頃の雰囲気のままで変わらずにいてほしいな。
あたしなんて、ほんと全然変わらないよ。相変わらず、人の事を考えずに動いちゃうし、おっちょこちょいだしさ。きっと千冬に怒られちゃうかもね。
でも、それでいいの。千冬は元気でいるかな? 早く会えるといいね。
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