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第八章 ハルイチの恋
千冬と再会した日から、三日が経った。
相変わらずあたしは青ちゃんと雑貨屋「星と花」で仲良く仕事をしている。店内にはこの前青ちゃんが知り合いから仕入れてきた家具が並んでいた。ビーズや装飾品で飾り立てられて、まるで別物の様に素敵な家具へと変身を遂げていた。
「めっちゃくちゃ可愛い!! これ部屋にほしいっ!」
今まさに運び込まれた雑貨達や家具を前に、あたしは目を輝かせていた。その中でも、一際好みのチェストを発見して飛びつくと、青ちゃんが右の手のひらをあたしに向かって差し出した。
「お買い上げありがとうございます。スタッフ価格で五万円になります」
にーっこりと笑う青ちゃんに、「ご!! ……五万……円?」と額に汗を滲ませ、空笑いをして背筋を伸ばす。
「さ、青ちゃんこれ値札書かないとねっ。あたしに任せて!」
「なんだよ買わないのかよ」
居候させてもらっている上に、バイト代をもらってるとはいえ、売り上げ貢献まではなかなか出来ない。
悔しいけれど、この家具は行くべき人の元へ旅立つことを願うしかない。手を組んで祈るように、「どうか可愛がってもらえるところに嫁に行くんだよ!」と家具に語りかけた。
カウンターで値札ポップを作っていると、青ちゃんが商品を綺麗に並び終えてから振り返った。
「ところでシュンは? 部屋?」
「んー? たぶん。寝てるのかな? 昨日も遅くまで起きてたみたいだし」
「……そっか」
青ちゃんが春一を気にしているのか、階段上を見上げている。降りてくる気配もないようで、青ちゃんはまた商品整理に取りかかった。
ポップを作りながら、チラリと青ちゃんの後ろ姿を見る。小さい頃からあたし同様に春一を兄弟のように可愛がっていた青ちゃん。一時的なのか、長期間なのかはわからないけれど、ここに春一が住むことになった時も、きっと青ちゃんはためらうことなく許したんだろう。
けれど、最近青ちゃんは春一を心配しているような気がする。
そういえばあたし、春一の事、何にも知らないかもしれない。
リズムよく走らせていたペンを止めて、考え込んだ。その瞬間、考えを遮るようにスマホがカウンターの上で鳴った。慌ててあたしはペンを置いてスマホを見る。そして、表示されている名前に思わず立ち上がってしまった。
「千冬だぁ!」
初めての千冬からのメッセージにウキウキしながら画面をタップした。
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