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幸人君のいれてくれたコーヒーの香りが広がる。食卓にはカップが三つ。私は幸人君のいれるコーヒーの香りが好きだ。
だけどもっと好きなものがある。
「はいどうぞ、召し上がれ」
はちみつがたっぷりかかったホットケーキ。ひおちゃんが作ってくれるこのホットケーキの香りが、私は世界で一番好きだ。
「ひおちゃん、今度の日曜日デートしよう」
ホットケーキを切り分けながら言うと、幸人君が首を横にふる。
「その日、ひおは俺とデートに行くんだ。だからだめ」
「えー、じゃあ土曜日は空いてる?」
「空いてる空いてる、デートしよう」
「やったー! 春服買いに行きたかったんだ」
私は最近幸人君とひおちゃんを取り合っている。幸人君はひおちゃんのことが大好きだから、娘の私にだってひおちゃんとの時間を絶対に譲ってはくれない。本当に大人げないと思う。
私達は三人家族だ。幸人君は私のお父さんらしい、でもひおちゃんは私のお母さんではない。私のママは別にいる。
こんな話を聞くと、みんな困惑した顔をするけれど、父親とか、母親とか、そんなことは私にとってはどうでもいい。
私にとって、幸人君とひおちゃんは間違いなく家族なのだ。幸人君とひおちゃん、そしてコーヒーとホットケーキがあれば私の人生は間違いなく幸せだ。
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