7人が本棚に入れています
本棚に追加
懲りない男
緑郎の父親はジーさんに命令する。
「ジー、さっさと緑郎の体にしがみつくんだ」
「はい」
「ジーさん、何するんだ!?」
子なき爺は緑郎の背中にしがみつき、ピキピキと石化した。緑郎は膝から崩れ落ちる。
「重い…」
「緑郎、歯を食いしばれ!」
父親はニュルニュルと首を伸ばすと緑郎と子なき爺を一緒に締め上げ、数メートル持ち上げた。ニュルニュル。
「ひぇ〜っ、父さん、助けてー」
「水の中に入って頭を冷やして来い!」
バシャーン。川の水面に水しぶきが上がる。
緑郎たちは橋の上から川に投げ落とされた。水面にはブクブクブクと泡だけが浮かんでいる。緑郎は子泣き爺の重りによって川の底に沈んでいく。
『だずげで…』
「緑郎、早く首を伸ばさないと溺れるぞ」
『ぐびを…』
ボコボコ…ボコ。水面に無数の泡が浮き出ている。
ボコボコボコ、ザバーン。
「ぷはぁ! はあ、はあ…」
水中から緑郎の首が浮き上がり、橋の上まで伸びてきた。
「緑郎、やればできるじゃないか」
「はあ、はあ…。僕の首が伸びた…。でも、酷いよ、父さん。川の中に投げるなんて」
「お前の生温い根性を叩きのめすためだ」
しばらくすると、緑郎とジーさんは川から橋の上に戻って来た。
「緑郎、ゴメンな。俺が変なことを言ったばかりに…」
「もう良いんだよ。ジーさんは僕のことを思ってアドバイスしてくれたんだから」
「緑郎…。お前はいい奴だな」
「今回のことで僕は目が覚めたよ」
「まあ、首も伸びるように戻って良かったな」
「そうなんだよ。ただの全裸男では駄目なんだ。それじゃあ人間たちと同じだろ。だけど、首が伸びる全裸男なら僕の妖怪としての個性も活かせるよ!」
「緑郎、お前…」
最初のコメントを投稿しよう!