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B面
B面はA面とは違い家族には邪魔されなかったようだ。その代わり、外にいるようで風の音や木々の葉が擦れる音が聴こえる。
『60歳の梅ちゃんはどんな人になっていますか?』
「年をとったぶんだけ老いを感じてます」
間があったので、答えてみた。こうしていると50年前の10歳の冨美ちゃんと話しているみたいで懐かしいし楽しい。
『梅ちゃんとあたしは50年後も友達を続けている?』
ザァーザァー
この質問が入るだろうなとは思っていた。わたしも似たような質問を録音していたから。
『言いづらいかな?まぁ、いいや』
おっとりしているけれどサバサバした面もあった冨美ちゃん。それからよくある質問が繰り広げられて、間が空いて、答えられる質問には答えていって23分は終わった。
カチャ
ゆっくりと開閉していく音を聞き、カセットテープを取り出すと、用意していた鉛筆を穴の中へと入れてテープを戻していく。
黒く艶のあるテープがピーンと伸びていく。
まだいくつかカセットテープが残っている交換テープは最後まで続けることができずに途中で終わってしまったの。
「冨美ちゃん、今の時代はネットで顔も見れるのよ。レトロブームなんてやめて顔が見たいな」
声が震える。今さらなにをと言われるのだろうか?
わたしは残ったカセットテープを入れB面して録音ボタンを押す。
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