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受け視点
記憶にある限り、4歳の時には初恋をしていた。相手は同じマンションで隣に住んでる7歳年上のお兄さん。近所でも有名な美少年であった藤崎麗に俺、相川陸斗も骨抜きにされていた。
「れいくん、だいすき。けっこんしてください」
初めての告白に麗は目を瞬かせた後、ハチミツよりも甘い笑顔を向ける。
「リクが大人になったらね」
「ほんとう?ぜったいだからね!」
大人になったら麗と結婚を出来ると思い、嬉しさのあまり抱きついた。麗はそっと背中に腕を回してトントンとあやす。
成長してもそれは変わらなかった。結婚して、と言えば、大人になったら、と返される。
薄々と受け流されているのではないか、と気付くが、大人になったら本当に結婚出来るかもしれない、と期待も大きかった。
早く大人になりたい俺にとって朗報があった。成人年齢が20歳から18歳になった事だ。2年も早く大人になれる。
麗は美少年から美青年になった。道を歩けば誰もが振り返り、アイドルが裸足で逃げ出すような華やかさ。早く俺だけの麗になって欲しい。引き下げられた2年は大きい。
高校の入学が決まった時、麗も就職先が決まった。俺は必死に勉強をして、近くの男子校に合格した。偏差値的に厳しかったが、家から歩いて10分が魅力的すぎて頑張った。麗が俺の高校の教師になると知り飛び跳ねるほど嬉しかった。俺の受験より早く決まっていたようだが、内緒にされていた。受験勉強に集中させる為らしい。
年齢的に学校が被ることがなかった。初めて麗と同じ学校に通える。抱きつき喜びを表す俺を麗は柔和に笑って頭をポンポンとして受け止める。子供扱いされている?
「リクの事ひいきしていると思われると困るから、学校では知らないふりしてね」
「え?麗と登下校したり弁当食ったりできねーの?」
「そうだね。それに俺の事、学校では先生と呼ぶんだよ」
寝耳に水、青天の霹靂。妄想していた麗との学校生活がガラガラと崩れる。
それでもこっそり手を振ったり出来るだろう、と思っていた。でも一人称が『私』で、俺の事を『相川君』と呼ぶ麗が全く知らない人に見えて嫌だった。学校では極力近付かないようにした。家に帰ればいつもの麗がいたから。
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