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「まだちゅーしたい」
トロンとした瞳で哀願されて、胸をギュンと鷲掴まれた。
「ちょっと待ってね」
ゴムの根本を押さえてゆっくり引き抜く。出て行くな、とでもいうような肉襞の圧に思わず熱の篭った声が漏れた。ゴムを処理してリクの身体を拭う。
初めてですぐに2回目を付き合わせるなんて出来ない。抱き潰してしまって、もうしたくない、と言われても困る。今日はハグやキスでめいっぱい甘やかそう。
隣に寝転がって抱き寄せる。額瞼頬鼻口と、顔中に唇で触れた。
「喉乾いてない?」
「乾いた。水飲みたい」
「待ってて。ついでにお風呂も沸かしてくるね」
頭を撫でて下着を身につける。首まで布団をかけて部屋を出た。
浴室のお湯はりスイッチを押して冷蔵庫から水を持って寝室に戻る。
身体を支えて水を飲ませた。
サイドチェストの引き出しを開けてリングケースを取り出す。目を瞬かせるリクに向かって開いた。
「受け取ってくれる?」
「うん、もちろん」
右手で指輪を掴んで左の掌を向けた。リクの左手が重なる。嵌めようとするも緊張で手が震えて格好がつかない。リクの視線がジッと注がれていて余計に平静でいられない。
やっとの思いで薬指に嵌めた。ほんの数秒のことなのに、ものすごく長く感じた。
「麗、ありがとう」
顔の横で手の甲をこちらに向けて、指輪が飾る手を見せてくれる。
「気に入ってくれた?」
「うん、すっげー嬉しい」
「サイズは?」
「ピッタリすぎて怖い。何で俺でも知らない指輪のサイズ知ってんの?」
寝ている時にこっそり測った、というのは黙って笑みを深める。それ以上聞かないで欲しい。こちらの気持ちを汲んでくれたようだ。聡い子だから。
「麗のはないの?あっ、麗のは俺が買うな!」
「俺のもあるから買わなくていい」
もう一つサイドチェストからケースを取り出す。開けて嵌めようとすると止められた。
「俺にやらせて!」
リクにケースごと渡し、左手を差し出す。俺とは違い、スマートに嵌める。大きな瞳を伏せてそこに口付けられた。離れて上目遣いで口元に弧を描く。可愛くてしょうがないのに、男らしくて格好良くもあるから、どんどん深みにハマって抜け出せない。
「俺の事こんなに好きにさせてどうするの?」
左手同士を絡めて身体を抱き寄せた。リクは指を握り返し、こちらに身体を預ける。
「俺だって麗の事こんなに好きなのにどうしてくれんの?」
背中に右手が回る。爪を立てられた所を触れられて少し痛んだが、リクに刻まれた跡だから幸せな痛みだ。俺も首から胸にかけて所有印をたくさん付けたし。
お風呂が沸いた音楽が鳴る。
「一緒に入ろ?」
「うん、でも連れてってくれる?」
「もちろん。つかまって」
横抱きにして唇を重ね、浴室に向かった。
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