1 月曜日

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1 月曜日

   風紀委員長、関谷一澄。彼は生徒の風紀に目を光らせるのは勿論のこと、校内の美化活動をも引き受ける、馬鹿みたいに真面目な優等生だ。 ――「松永くんのことが好きだからです」  そんな関谷から思わぬ告白を受けてから、一週間。校内で関谷を見かけることは何度かあったが、まだ一度も話していない。正直、自分からはどうやって声をかけたらいいのかわからないし、関谷はと言うと明らかにこちらを避けている様子だった。  決定的だったのは金曜の午後、移動教室のために廊下を歩いていた時にすれ違った瞬間だ。前から歩いて来ていた関谷と目が合った途端、関谷は大袈裟に目を泳がせ、終には小走りで去って行った。 「そういえば、無事に終わったんだ?」  隣に居た波多野に突然そう振られ、 「何が?」  と返しながら視線を戻す。 「ほら。関谷くんの特別指導」 「あぁ……まあ、終わったな。無事に、なのかはわかんねーんだけど」 「ネックレス返してもらえなかったの?」 「返してもらったよ」  良かったじゃん、という波多野の言葉を聞きながら、脳裏には自然と金曜の出来事が蘇ってきていた。赤く染まった窓の外の夕焼けと、関谷の頬。記憶の中の関谷が口を開くのと同時に、俺はつい声を出していた。 「……告白、された」 「え? 関谷くんに?」  頷いて返すと、波多野は「へー」と少し目を細めて、 「それで?」と続ける。 「それでって、別に。それだけ」 「付き合うとか断るとか、あるでしょ」  波多野の言葉に「いや……」と反射的に声が出た。 「返事してないの?」  そして、すかさず飛んできた質問に、さらに「いやいや」と俺は首を振る。 「返事もなにもアイツ、一方的に話してそのまま帰ったんだよ」 「えー。でも関谷くん、返事待ってるって絶対」 「……付き合ってーとか言われてねえんだけど」  言い終わってから、自分でもなんだか言い訳をするみたいな口調だなと思ってしまった。波多野も同じようなこと思ったのか、同じことでしょ、と半ば説教をするような口調で、 「とにかく。そんな風にいじいじ悩んでないで、本人に突撃あるのみ!」  と続ける。  そもそも言い訳って、何に対してだ?  それに俺はいじいじ悩んでなんていないし、なんで俺から聞きに行かなきゃいけねえんだ。  突っ込みたいところは色々あったが、とりあえず頷いておくことにした。  
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