1 月曜日

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   そして週が明けた月曜の放課後、俺は関谷と話をしようと決意を固めて昇降口に向かった。  顔を合わせて、なんて声を掛けようか。  そんなことを考えてはいたが、結局はっきりとした言葉は定まらないままで昇降口に辿り着く。予定ではやって来るであろう関谷を待ち構えるつもりだった。が、外へ出て行く生徒たちの中に紛れた小さな後ろ姿を見つけ、俺は慌てて靴を履き替える。  昇降口を抜けて辺りを見回すと、校門の方に向かう人波から一人外れた影が、校舎の脇へ向かって角を曲がっていくのが視界に入った。その先には、焼却炉がある。二週間前、関谷と初めて話したゴミ捨て場だ。 「関谷」  俺が声を出すのと、関谷がこちらへ振り向くのはほとんど同時だった。またこんな場所を掃除しようとしているのだろう、箒を手に取ろうとしていた関谷は、俺に驚いて動きを止めている。距離を詰め、目の前に立ったところで向こうが一歩足を引く。 「話、あんだけど」 「この間は、すみませんでした」  空中で言葉が衝突する。  誰も来ないようなゴミ捨て場には数秒の沈黙が落ちて、俺は再び口を開いた。 「すみませんって、何が?」 「……変なことを言ったので」 「変なことって?」 「……」 「俺のこと、……好きって話?」  関谷は箒を握りしめ、足元に視線を落としたまま黙って眉を寄せる。再び訪れた沈黙の中、自分で口に出した言葉がだんだんと小恥ずかしくなってきて、思わず「聞いてる?」と続けた。  そんな俺の前で関谷は数回瞬きをしたあと、 「忘れてもらって、大丈夫です」  と口籠る。  ……忘れろ、だって?  思考が止まって、息を吐くのと一緒に「は?」と声が漏れる。 「一方的に言い逃げしといて、今度はそういうこと言うんだ?」  俺の言葉に関谷はばつの悪そうな顔をしたまま口を閉じていた。 ――「松永くんのことが好きだからです」  一週間。一週間も、自分だけがそんな言葉に思考を振り回されていたのだろうか。それじゃまるで、俺が勝手に一人で思い上がってた、みたいな。  そんな恥ずかしさと、関谷が何を考えているのか解らないもどかしさが混ざって、じわじわと苛立ちが広がった。  
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