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「第二性の診断はついたけど、僕はオメガとしては未成熟みたい。もう二十七歳なのに未成熟も何もないんだけどね」  リュカのふにゃふにゃした表情は、ジェイミーがアルファだと告げる前と何ら変わらなかった。まるで警戒心がない。  そんなリュカを見ていたら、あんまり神経質になるのもバカバカしく思えてきた。  オメガ性というのは、身近なアルファに誘引される形で開花すると言われている。周りにアルファがいなければ、ベータと変わらない生活が送れるのだと聞いたことがある。きっとリュカもそうなのだろう。周りにアルファがいない環境、というものに縁がないジェイミーには不思議な話だ。  自分がリュカにとって初めての『身近なアルファ』になることに気付かずに、ジェイミーは納得した。  ――しかし、オメガ性が開花していないということは、ヒート中のセックスも経験したことがないということか……。このぼんやりしたオメガは、どんな顔でセックスするんだろう。  ふと、リュカの乱れた姿を想像しそうになって、慌てて打ち消す。  新しくできた友人に対して失礼だ、という感情より、この色気の欠片もないオメガに対して邪な目を向けようとした自分が許せないのだ。そこまで飢えちゃいない。大体、好みじゃないし。  食事は和やかに終了した。 「僕、バイトに出掛けるとき以外は基本的に家にいるからさ。時間が合うときはまたいっしょに食事をしようよ」  帰りしな、玄関まで見送ってくれたリュカが言った。 「へえ、在宅勤務なんだ。仕事は何をしてるの――って、聞いてもいい?」 「うん。児童書の翻訳と、あと、すこし、僕自身も児童向けのお話を書いてる……」  後半は気恥ずかしそうにしながら、リュカが言った。 「へえっ、きみは作家なのかい? どんな本を書いているの? ペンネームは? 読んでみるから教えてくれないか」  予想外の食いつきにリュカは目を丸くして、それから自分が翻訳した本と、執筆した本を気恥ずかしそうにしながらもそれぞれ一冊ずつ持ってきてくれた。ジェイミーは喜んでその二冊を借りて、リュカの部屋をあとにした。最後に、明後日の夕食をいっしょに取る約束もして。
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