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「……あの、ろざさん」
「んー? なあに、ざくくん」
本社ビル社内向けエリア八階、カフェテリア。
ディナーのハンバーグ定食を前に、柘榴は向かいに座るローザへと声をかけた。
「その、さっきの人たち……ひょっとして、何かあったんですか……?」
「ふふっ、ざくくんはよく気が付く子だね」
気配り上手な子にはご褒美あげちゃう。
そう言いながら、ローザは自身が持ってきたロースカツ定食の皿から、主役であるロースカツのうちど真ん中の一切れを柘榴の皿に移す。
一番上等な部分を急に押し付けられて、柘榴は驚きに肩を竦めつつも深々と頭を下げた。
「何というかさ、ここでは『よくあること』なんだよね」
「よくある、ですか……?」
柘榴が呟くと、ローザはふっと笑って視線を横に向ける。
その先には、行列のできている麺コーナーに並び、やっとのことでラーメンを手に入れたらしいニゲラの姿があった。
「俺らはさ、すごく運がいいんだ。あの社長の目に留まって、チャンスを与えられて、デビューまでの特急券を貰っちゃった」
「特急券……」
ぼんやりと、ローザの言葉を復唱する。
そんな柘榴に視線を戻し、ローザは穏やかな笑顔のまま言葉を続けた。
「ざくくん、研修生って何人居るか知ってる?」
「えっと……」
「……ぶっぶー、時間切れ」
没収~、と言いながら、今度は柘榴の皿からサラダのミニトマトがローザのもとへと攫われていく。
……言うほど好きというわけでもないので、特に痛手にはならないのだが。
「今はね……だいたい百人くらいかな」
「ひゃ……!?」
「っふふ、初めて聞くとそういう反応になるよね」
ローザは柘榴の反応にころころと笑った後、少しだけ複雑な笑みを浮かべた。
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