002-02. その一輪は雪の中で

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  「……あの、ろざさん」 「んー? なあに、ざくくん」 本社ビル社内向けエリア八階、カフェテリア。 ディナーのハンバーグ定食を前に、柘榴は向かいに座るローザへと声をかけた。 「その、さっきの人たち……ひょっとして、何かあったんですか……?」 「ふふっ、ざくくんはよく気が付く子だね」 気配り上手な子にはご褒美あげちゃう。 そう言いながら、ローザは自身が持ってきたロースカツ定食の皿から、主役であるロースカツのうちど真ん中の一切れを柘榴の皿に移す。 一番上等な部分を急に押し付けられて、柘榴は驚きに肩を竦めつつも深々と頭を下げた。 「何というかさ、ここでは『よくあること』なんだよね」 「よくある、ですか……?」 柘榴が呟くと、ローザはふっと笑って視線を横に向ける。 その先には、行列のできている麺コーナーに並び、やっとのことでラーメンを手に入れたらしいニゲラの姿があった。 「俺らはさ、すごく運がいいんだ。あの社長の目に留まって、チャンスを与えられて、デビューまでの特急券を貰っちゃった」 「特急券……」 ぼんやりと、ローザの言葉を復唱する。 そんな柘榴に視線を戻し、ローザは穏やかな笑顔のまま言葉を続けた。 「ざくくん、研修生って何人居るか知ってる?」 「えっと……」 「……ぶっぶー、時間切れ」 没収~、と言いながら、今度は柘榴の皿からサラダのミニトマトがローザのもとへと攫われていく。 ……言うほど好きというわけでもないので、特に痛手にはならないのだが。 「今はね……だいたい百人くらいかな」 「ひゃ……!?」 「っふふ、初めて聞くとそういう反応になるよね」 ローザは柘榴の反応にころころと笑った後、少しだけ複雑な笑みを浮かべた。  
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