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「……バックダンサーなし、本当にざくくん一人かあ」
ローザが静かに呟き、ニゲラが考え込むように顎に手を当てる。
「これ、移籍組レベルの扱いだよな。そんなに知名度すごいのか、柘榴」
「ああ。『読モ時代、柘榴が登場した号の後に雑誌公式アカウントのSNSフォロワーが激増した』って社長が言ってたからな」
「わあ……そんな子を後列で出したら、センターの出番食っちゃうね……」
「そういうことなら、妥当だな」
柴田マネージャーたちが話している横で、柘榴は黙って青くなっていた。
研修生中心とは言え、それなりに注目されている番組で、いきなりのソロ。
しかも、観客は研修生のファン――デビュー組からもう一歩踏み込んだニッチな領域を見ているような、そういう層だ。
「……ざくくん、大丈夫?」
「……はい」
「大丈夫そうな顔色はしてないぞ」
「…………正直吐きそう」
「だよね……よしよし……」
ローザが憐れむような表情を浮かべ、柘榴の頭を撫でた。
「どうする? 社長判断ではあるけど、さすがに新人には荷が重いって意見ももっともだからな……見送りにしたいっていうなら、俺から交渉するけど」
柘榴の様子に想うところがあったのか、柴田マネージャーが苦笑しながら提案する。
しかし、その言葉を聞いた柘榴は、青いままの顔をゆっくりと横に振った。
「…………やります」
「……そっか。んじゃあ、社長にも伝えておく。この後、一緒に曲決めような」
「はい……!」
柘榴の返事に、柴田マネージャーはほんの少し安堵したような表情を浮かべる。
「……柘榴、結構頑固だよな」
「っふふ。そりゃあ、あの社長と柴ちゃんのお眼鏡に適う子だもの」
一連のやり取りを見届けたニゲラとローザは、そっと耳打ちし合うのだった。
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