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しとしとしと。あてもないまま、僕と瑠璃お兄ちゃんは公園に向かう。途中で更紗お姉ちゃんと瑞希先生に会った。
「あら? 兄弟でデート?」
「瑞希先生も更紗お姉ちゃんとデートですか?」
「そんなとこだよ。パンケーキ食べに行くんだ。で、瑠璃くん、なんか挙動不審だけど?」
「デートって言われて浮かれているんです。瑠璃お兄ちゃんは極度のブラコンだから」
「今にも溶けそうな顔してるね……」
更紗お姉ちゃんが呆れている。
「まあ楽しんで。翡翠くんのバイタルチェックは今日はしないからのんびりしなよ」
「更紗お姉ちゃんも瑞希先生も楽しんでください。ほら、瑠璃お兄ちゃん行くよ」
デレデレの瑠璃お兄ちゃんの手を引いて僕は進む。てか雨の日でも外出する人っているんだ。みんな引きこもっている訳じゃないんだ。
「そう言えば……」
瑠璃お兄ちゃんが何かを思い付いたようだ。
「翡翠、駅前行ってみない? 多分今日日曜だからあいつらいるはずだから」
「あいつらって?」
「行けば分かるよ」
行き先変更で僕らは駅前に向かう。そこに瑠璃お兄ちゃんの言うあいつらは確かにいた。
「へーい、そこの少年! 女体化してみない?」
男の子をナンパしている大さんと徹さんだ。
「よ! 久しぶり!」
瑠璃お兄ちゃんが声をかけると大さんと徹さんの顔がへにゃっと崩れた。
「瑠璃ーー! 就職してからあんまり会えなくなったから嬉しいぃぃぃ!」
「で、成果はどう?」
「ん〜。なかなか捕まらないよ。昔の瑠璃みたいにラッキースケベ連発してくれそうな潜在的にょたチョコ男子ってなかなか……」
「翡翠くんに期待してたけど、翡翠くんのラッキースケベ食らった日には瑠璃、俺らをやりにくるだろう?」
「当たり前だろ? だから駅前で男の子のナンパしててもみんな文句言わないんだよ。頑張れよ」
「もちろん! 素敵なラッキースケベを描いてみせるよ! えっちすけっち美すけっちだよ!」
「じゃあな」
大さんと徹さんはよく分からないことを言っていたが瑠璃お兄ちゃんと会話が成立していた。会話に入れる雰囲気じゃなかったので僕は何も言わなかったけど。
また公園を目指して途中で自販機で飲み物を買う。僕も瑠璃お兄ちゃんもオレンジジュース。公園まで空き缶入れがないので自販機の前で飲む。雨はやっぱりしとしとしと。
「ねぇ瑠璃お兄ちゃん、大さんと徹さんはお仕事だったの?」
「いや、仕事の一貫だけど、あれはあいつらの趣味。俺や香多くんを掘り出したときの感動をまた味わいたいんだって。伊織先生の二人への仕事の振り方はブラックだったけど、今の上司の本乃社長はブラックな仕事の振り方しないから。ただ単に可愛いにょたチョコ男子見つけたいだけだよ」
「……にょたチョコ男子より彼女探したほう良くない?」
「翡翠、世の中には目を背けたいこともあるんだよ。生温かい目で見守っててあげよう」
間違いなく彼女持ちの台詞だ。こうやって格差って生まれていくんだ。
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