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「いらっしゃい隼人くん、待ってたよ!」
扉を開けると声をかけられる。
「あぁ。克巳さん、久しぶりだな」
返事をしながら男の対面に位置するソファに腰かける。
前に腰かけている理事長は財前 克巳と言って、父の昔からの友人であり、よくウチに遊びに来ていたため俺の友人的存在でもある。
この男はとても整った顔立ちをしていて、もうそろそろ40に近づいてきているというのに全く老けず、見た目は20代後半くらいにしか見えない。
「本当に久しぶり!隼人くんの中学入学以来だね〜。昔から男前だったけどもっと男前になっちゃったね。本当に僕好みだ!僕がもっと若かったらなー?」
克巳さんが目をキラキラさせながら話しかけてくる。この人は口達者で、するすると世辞や冗談が飛んでくるためもう慣れた。
「…そうだな。俺がもっと大人だったら何か違かったかもな?」
言われっぱなしは性にあわないので相手の目を下から覗き込むように意地悪く笑い言い返す。
「っ、ほんとに隼人くんは〜!そんなことしてると勘違いされまくってめんどくさい事になっちゃうよ?」
耳まで赤く染めながらプンプンと効果音がつきそうな感じで言われる。
「はは笑 大丈夫だ、俺だってからかう相手は少なからず選んでいる。それに、克巳さんは勘違いなんてしないだろう?」
もちろん分かりやすく俺に惚れてる奴らにはこんなことしない。なんなら笑顔や表情の動きもあまり見せないように気を使っている。
可能性がないのに気を持たせるのは辛いだろうし、こちらとしても望んでいないからな。
「っ!っそうだね!まぁ、隼人くん位になると"絶対に勘違いしない"、"惚れない"っていう人を探す方が難しいとは思うけどね?」
克巳さんは少し焦ったようにまくし立ててくる。
「まあ人間100%なんてないからな。
でも、俺は克巳さんみたいな人がいて本当に助かっている。変なことを言うみたいで悪いが、俺に惚れないでいてくれてありがとな。」
俺の心からの感謝だ。正直自分に惚れてるアピールをしてくる相手に普通の世間話はしにくいし、面白くは無い。
俺にとってはただの友達でいてるれる人種が本当にありがたい。
「…うん。まかせて!歳は離れてるけど、僕たちずっと友達でいようね。気軽に理事長室に逃げてきていいし!」
克巳さんが一瞬苦しそうな表情をした気がしたが、本当に一瞬だったので見間違いだったことにする。今の会話にそんな要素ないしな。
「あぁ。本当に助かる。…それで、ここに来たのは色々な説明とやらを聞くためなんだが?」
さすがに話が脱線しすぎて帰ってこなかったので本題を振る。
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