転入生俺

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ドアを出ると、歩きながら担任は振り向いて話しかけてきた 「…改めて、俺はお前の担任になる一 司だ。」 担任は何故かすごく緊張しているようだった。 こちらを見る顔がこわばっている。 「あー、すみません。俺は威圧感があるらしいんです。 怒っているように見えるのかもしれないがそんなつもりは無いので、そんなに緊張しないで貰えるとありがたいです。」 元々の身長とわざとあまり動かさないようにしている表情筋のせいでビビられるのは日常茶飯事だった。 だが、さすがに先生をビビらせるのは申し訳ないな 「いやっ!違う。…お前ほど整った顔面の奴を見たことがなくてな、人形みたいってお前みたいなことを言うんだろうな。正直完璧すぎてビビった。死ぬほどツラが良い奴なんてこの学園で見飽きてると思ってた。」 少し焦ったように理由を並べてくる。 怖がられていると思っていたから拍子抜けだ…。 「…なるほど?じゃあ先生は俺がかっこよすぎて見とれちゃってたってことでいいですか?」 否定されたとはいえビビられたのは事実だからもう少し軽く接して貰えるようにからかっておく。 「っ!!なっ!!」 ぼっと音がしそうなくらい担任の顔が赤くなった。 「ふはっ笑 そんな過剰反応しなくていいじゃないですか 大丈夫。冗談ですよ笑」 俺が笑うとまた担任が固まった。 一通り笑い終えてから固まった担任を見て首を傾げる。 「…っ…はぁ、もういい。緊張してたのが馬鹿らしくなってきた。」 担任は息を飲んでからため息をついた。少し呆れられたか? まぁ全然いいけど、担任だし軽口を叩けるくらいには仲良くなれるといいな。 「そうしてください。一先生が緊張してるとうつるので笑」 1年間担任としてかかるんだ。初対面は大切だし、多少は打ち解けておきたいしな。 「あぁ。…なぁ、俺のことは司と呼んでくれ。んで、お前のことも隼人と呼ばせてもらってもいいか?」 担任は何故か決死の覚悟と言ったような表情で聞いてきた。 「?全然いいですよ、好きに呼んでください。司先生」 俺がそう言うと司先生は満足気に顔を綻ばせた。 「…いいな。よし、もうそろそろ教室に着くぞ。俺が先に入って少し話すから廊下で待っていてくれ。 俺が呼んだら入ってきて自己紹介な、いけるか?」 「あー…はい。人前に立つの好きじゃないですが頑張ります。」 自己紹介のことを思い出してちょっと気分が沈む。 「そうなのか?堂々として見えるし慣れていると思ったが」 司先生は不思議そうに見てくる。 「いや、良くも悪くも目立つので。視線がうるさくて…」 少し言い淀むと司先生は「あー…」と少し憐れむような視線を向けてきた。 「…まぁ、なんだ。俺もこんなだから理解出来る。だが、お前の容姿ならもっとだよな…。正直かける言葉が見つからん、慣れろ。」 司先生の言うことはもっともだ。……腹くくるしかないんだよな。はぁ 「…よし。腹くくりました。俺の自意識過剰で案外、みんな興味持たない可能性とかもあるので。」 近くに見えたSクラスの扉を見ながら話す。 「……覚悟しておけよ。じゃあさっき言った通り先に入るな」 司先生は少し遠くを見るような顔をしてから扉を開け、Sクラスに入っていった。
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