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「私……もう、死んじゃうの……」  ひゅうひゅうと言いながら彼女がつぶやく。嫌だ。生きたい。誰か助けて。彼女は泣きわめくが、感染を恐れ医師も看護師も彼女の部屋にはやってこない。  どうして。ねえ、どうして、私だけ、こんな目にあってるの? ねえ、誰か助けてよ。お願い、私を助けてよ。  彼女は願った。真夜中の病室で叫んだ。そのとき、誰もこないはずの病室のドアが開いた。 「え? だ、誰?」  少女はドアの方に目を向ける。 「やあ」  そこには色白の少年が立っていた。 「あなた、どうしてここに……?」 「きみが助けを求めたからさ。ぼくは誰かが助けを求めたら、絶対に助けに行こうって決めてるから」  それは、あのときの笑い話のネタだった。ただの冗談だと思っていたけど、今の少女にとってはその言葉がなによりありがたかった。 「ごめんね。でも、私、もう、ダメみたい。約束は守れない」  少年はかぶりを振った。 「そんなこと、気にしなくてもいいよ」  少女は最後の力を振り絞る。 「ねえ、お願い。最後に歌って? いつも私を元気にしてくれた、あの歌を」 「うん」  少年は、ふうとひとつ息を吐く。そして、歌をうたい出す。   「鈴を鳴らそう。きみが笑うように」  この歌詞は、少女を励ますものだった。そして、少年は雪の日の自分の失敗談も歌に盛りこんだ。  雪のなかで転んだ話。そして、通りかかったおじさんが助けてくれなかった話。懐かしい笑い話に彼女は声をあげて笑った。少年の陽気な歌が終わると、少女は言った。 「ありがとう。最後に笑わせてくれて」  少女は泣きながらお礼を言った。そして、そのまま目を閉じた。
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