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「おや……?」  翌日の検査結果を目にした医師は頓狂な声をあげた。 「どうしたんですか?」  思わず看護師がたずねる。医師は怪訝な表情をしている。 「数値がよくなっている……?」  手書きのカルテと少女の顔を順番に見比べる。そのカルテには前日よりもほんのわずかに改善された数値が記載されていた。 「え、それなら、私……」 「いや」  少女の希望を医師はすぐに否定する。 「たとえ数値がよくなっていると言っても、異常値であることに変わりない。健康な人間とは比べものにならないくらいに悪いんだ。昨日の言葉がひっくり返ることはない」 「でも、私……」  昨日より少しだけ身体が楽な気がする。そんな言葉を伝えるが、医師はそれも否定した。 「そんなものは気のせいだ。今、きみの身体は治療不可能な病に侵されている。それはまぎれもない事実なんだ。へたな希望は持たない方がいい」  その言葉を耳に残し、彼女はまた一人きりの病室へ戻る。窓の外の天気は昨日と変わらず晴れていて、わずかな風がカーテンを揺らしていた。 「こほっ、こほっ……」  彼女は口を手で押さえて咳をする。透明な液体が少しついているだけだった。 「今日は本当に調子がいい気がするんだけどな」  もしかしたら、明日はもっと調子がよくなるかもしれない。そう願って彼女はベッドに横たわる。そういえば、今日はあの歌声が聞こえてこないな、なんて思いながら、瞳を閉じて彼女は意識を手放した。 「ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ……」  その夜、彼女は激しい咳で目を覚ます。ぜえぜえと息を吐く。押さえた手は真っ赤に染まっていた。すぐに全身防備の看護師が駆けつけ、彼女の背中をさすった。現状、彼女に対してとれる施策はこれ以外にない。医師を呼んでも同じ処置しかできないことを看護師も少女も知っていた。
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