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「大丈夫。気にしないで」 「でも……」  少女は目にした。少年の右の手のひらが赤く染まっているのを。 「あなたも病気なの?」  彼女はたずねる。少年はかぶりを振った。 「なんでもないよ。それより、歌だよね。いつもの歌でいいのかな?」  そう言って少年は、歌詞のない歌を口ずさむ。その音色は、どこか楽しげで彼女の心に染みこんでくるようだった。 「ありがとう」  少年の歌が終わると、少女はお礼を言った。明るくなった彼女の表情と反比例するように、少年の顔色は悪い。 「あなたのおかげで元気が出たわ」 「それはよかった。ごほっ、ごほっ……」  少年は口を手で押さえる。少女はその姿から目をそらす。代わりに言った。 「ね、ねえ、もしよかったら、私たちお友達にならない? 私、誰もお見舞いにきてくれなくて、ずっとここで一人ぼっちなんだ」  少年は「ぼくも同じだよ」と言う。 「でも、ぼくはこの病院の患者じゃない。それでもよければ」  少女の顔がさらに一段明るくなった。 「ありがとう。じゃあ、またくるね! あ、それからその歌、歌詞があればもっと素敵になると思うな」
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