となりのラブソング

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 お金がないのに京都の大学に合格してしまった。 「京都の大学?」 「すごいね、がんばれ!」  そう背中を押されて福岡からはるばるやって来たものの、私にはお金がない。家が貧乏だからだ。こつこつバイトして貯めた金と、奨学金、親戚からもらったいくばくかの合格祝いだけで、これから生きてゆかねばならない。差し当たっての悩みは住まいである。鴨川のほとりで、一人ため息をつく私だった。  思っていたのは、クラシックな町屋風アパートに住みたいな、ということだ。だって京都っぽいし、築ウン十年の物件だったら、家賃も比較的安そうだと思ったから。  そういう物件は、あるにはあった。木造のオンボロアパート。外壁には一部ペンキの跡のようなものがあり、いつかの学生運動とかそれ以外の学生の運動を思わせる、それなりに趣のある建物だ。  思っていた「町屋風」とは違うけど、「クラシック」ならクリアだし。まあいいかな、と思った。何しろ家賃が異常に安い。ここなら奨学金だけでも、4年間やっていけそうな気がしたのだ。  仲介業者に尋ねてみると、空いていたのは一階の一室だった。  表札のところに 「薔薇」  とある。 「……薔薇。」
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