となりのラブソング

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「部屋にいると、いてもたってもいられなくなります。部屋にあるギターを弾いて、歌いたくなってしまうんです。僕ギターは弾けないのに」 「えっ、そうなんですか。じゃあギターは」 「備え付けです」 「備え付けの、ギター」 「はい」  おかしい。備え付けのエアコン、備え付けの冷蔵庫なら聞いたことがあるが、備え付けのギターってどういう文化だ。古都京都だからってそんな習慣ないだろう。 「僕作曲とか全部打ち込みで作ってるんです。でも機械なんか触らせてくれません。ひたすらギターです。ギターを弾きたくて弾きたくてたまらなくなります。自然とギターへと手が伸びてしまうんです。アルコール依存とかギャンブル依存とか、知りませんけど多分そういう感じです。まぁ、おかげでちょっとは弾けるようになりましたけど」 「あっ、そうですよね。うちにも聞こえてきます。上手ですよね」 「あっ。まじですか」 「えーと、ハイ。あっ、すいません、盗み聞きしちゃって。隣に住んでるもので」  って、何謝ってんだ私は。 「でもつらいんです」  すると男はまた苦しげに目をそらした。
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