3人が本棚に入れています
本棚に追加
「部屋にいると、いてもたってもいられなくなります。部屋にあるギターを弾いて、歌いたくなってしまうんです。僕ギターは弾けないのに」
「えっ、そうなんですか。じゃあギターは」
「備え付けです」
「備え付けの、ギター」
「はい」
おかしい。備え付けのエアコン、備え付けの冷蔵庫なら聞いたことがあるが、備え付けのギターってどういう文化だ。古都京都だからってそんな習慣ないだろう。
「僕作曲とか全部打ち込みで作ってるんです。でも機械なんか触らせてくれません。ひたすらギターです。ギターを弾きたくて弾きたくてたまらなくなります。自然とギターへと手が伸びてしまうんです。アルコール依存とかギャンブル依存とか、知りませんけど多分そういう感じです。まぁ、おかげでちょっとは弾けるようになりましたけど」
「あっ、そうですよね。うちにも聞こえてきます。上手ですよね」
「あっ。まじですか」
「えーと、ハイ。あっ、すいません、盗み聞きしちゃって。隣に住んでるもので」
って、何謝ってんだ私は。
「でもつらいんです」
すると男はまた苦しげに目をそらした。
最初のコメントを投稿しよう!