となりのラブソング

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 と、思わず声に出して読んでしまった。 「ああ、これはですね。この部屋の名前です。普通のマンションで言うところの、「101号室」みたいなものです。このアパートでは番号の代わりに、部屋に名前がついてるんですよ。なので住所のほうも、〇〇町××アパート薔薇、と、こういった具合になります」 「えっ……何か、アレですね」 「はい、まぁ、アレですよね。分かります。でも学生専用ですし、いい出会いがあるかもしれませんよ」 「はぁ」  ドアも木製のようだ。ゆっくりと慎重に開け、中に入る。  意外なことに、部屋の中は広さも収納も全然悪くなかった。ていうか水回りなどはきれいにリノベートされており、何でこんなに家賃が安いんだろう、と、首をかしげるくらいだった。  しかも、紹介してくれた営業マンが 「この部屋、ほかのお客様からも内見のご予約をうかがっておりまして。ご成約はお早目がよろしいかと」  と、言うのである。  これ以上安い物件が見つかるという確証はない。 「ここにしますっ」  私は即決したのだった。  というわけで、はじめての一人暮らしが始まったのだが。  一つ、「薔薇」以外に気になることがあった。
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