となりのラブソング

　それは、ギターの音である。
　毎晩、午後十時ごろだろうか。必ずといっていいほど隣から、ギターの音が聞こえてくるのだ。
　実は、私は夜は十一時就寝を心がけている。早寝早起きをしたほうが、頭がよくなると聞いたからだ。私は頭がよい人間になり、大学に合格したかった。だから受験勉強を始めたくらいから、ずっと十時には布団に潜り、十一時までには寝るようにしていた。それは今でも習慣として続いている。
　それなのに、布団を敷き、さあ寝ようと目をつぶったとたん、静寂にまぎれてギターの音が流れ込んでくるのである。それも、毎晩。
　この音を、何とたとえたらよいだろう。早く眠りたい私にとっては、夏の夜の蚊の音に近い不愉快さだ。ふぁぁぁ〜ん、と、聞こえるか聞こえないかの音量で耳の穴に忍び寄ってくるのである。とぎれとぎれのギター音が。