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そんな人に「すみませんが、お宅のギター、ちょっと音が……。夜中に大きな音を出すと近所迷惑ですから、おやめになったほうがよろしいかと」などと言って、伝わるだろうか。いや無理。無理でしょう。ていうか話したくない。
やめとこう。がまんしてギター音は子守唄がわりに聴くとしよう……。
思いながら、窓を少し開けた、その時だった。
メロディ。
歌声が、どこからか流れてくる。
少し甘さが残る、太い声……。
はっ、と私はすぐに我に返った。
どこからか流れてくる……じゃないよ。隣からだよ。分かってるよ隣だって。隣以外にどこがあるってんだよ。
ギター音も少しクセのある歌声も、もはや耳にしみついている。ていうか、気づかなかったけど昼間も歌っていたんですね。窓を開けたせいで、よけいくっきりと聞こえてくる気がする。
あれ?
私は耳をすませた。
昼間覚醒した状態で聴くと、意外とよいかも。声が少し中性的だ。そのせいか、歌詞がすんなりと心の中に入ってくる。ギターのほうは練習中かな? あ、また間違えた。
がんば……。
気がつけばほほえみを浮かべている自分がいて、思わず口をつぐむ。
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