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私は慌てて外へ飛び出した。
何?
何事?
すると「牢獄」のほうから人が飛び出してくるのが見えた。
ボサボサの髪、ダルダルに着崩れた服。
一目で私の隣人、「牢獄」の住人だと推し測ることができる。
目が合った。
変人だ!
やばい! 逃げろ!
と動き出すより先に、相手が急にこけた。
「あっ! 大丈夫ですか!」
つい声をかけてしまう優しい私……!
すると相手はむくっと起き上がるやいなや、私の両膝をガチッとつかんで、
「助けてください……!」
と泣き出したのだった。
「あの部屋、呪われてるんです……!」
「の、呪われ?」
「一日中、歌を歌い続けないといけないんです!」
何を言ってる。
とりあえず半地下の「牢獄」に続く階段に、男を座らせた。
「僕、歌手になるのが夢で」
涙を拭いて、ぽつりと男は話し始めた。
「それで、音楽が作れる部屋を探してたんですけど、そしたらこの部屋を紹介されて。「ある意味弾き放題です」って、言われたんです。その時にちょっと変だな、とは思ったんですけど。まさか、こういう意味だったとは」
男は深いため息をついた。
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