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ずいぶんと大きくなって雰囲気も大人びていたけれど、ケントにはすぐにルウだと分かった。ルウは、無数の扉の少し上で、ぷかぷかと浮かんでいた。ルウの髪は三つ編みに結われ、ケントのところまで、長く長く垂れ下がっていた。
三つ編みの長さは、会えなかった時間の長さだ。
こんなにも時が過ぎていたなんて。
「ケント」
ルウは言った。
「何も信じないで」
「どういうこと?」
「私を、信じて」
どういうこと?
ケントは、ルウの髪に手を伸ばした。
そのとたん、何もかもが消えた。
長いこと、目をつぶっていたようだ。光がまぶしい。ゆっくりと少しづつまぶたを開く。
目の前にルウがいた。
ルウは、天井を背にして、ケントの上に覆いかぶさっていた。おでこのかたちや瞳の色に、子どもの頃の面影が残っている。
無数の扉も果てのない廊下も、すっかり消え失せていた。階段。窓。赤茶けた床。もといた、魔女の家だ。
「る、ルウ」
やっとのことで、声を出すことができた。
「なに?」
「ど、どういうこと……どうして、君が僕の上に乗ってるの」
「あっ! ごめん」
ルウは僕の腹に乗せていた足をどかせた。
「私、あそこから飛び降りたのよ」
ルウが指差す先には、二階の部屋の扉があった。ルウの部屋なのだろうか。
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