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そう言っておばあちゃんは、おばあちゃんの書斎にある本しか読ませてくれなかった。
となりに住むケントだけが、おばあちゃん以外で唯一の話し相手だった。ケントの部屋はルウの部屋の真向かいにあって、窓越しにお互いの顔が見える。少し大きな声を出せば、おしゃべりすることもできた。
日が暮れたあと、地上を照らすものが月と星だけになった頃、窓から紙コップが投げ入れられる。
ケントからだ。紙コップには糸がついている。ルウとケント専用の糸電話、というわけだ。これで二人は、ひそひそと二人だけで話した。
「この糸が、もっと分厚いロープだったらよかったのに」
ルウは二人をつなぐ糸の頼りなさが、うらめしかった。
「そしたら、ケントのところに行けるのに」
「待って、ルウ」
ケントはどこからか長いロープを持ってきて、言った。
「これなら、どう。このロープを伝っていったら、僕の部屋まで来れるかも」
やってみない手はなかった。
重たいベッドにロープをくくりつけ、ケントの部屋との間にロープの「橋」を渡す。これに捕まって一メートルも進めば、ケントが私を抱きしめてくれる……。
「何をやっている!」
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