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寄宿学校では夏と冬に一度ずつ、故郷に帰ることができる。学校に残り遊び尽くす子どももいる中、ケントは律儀に故郷に戻ってきて家族を喜ばせた。
家に帰ってくるたび、ケントはいつもの一本道を通った。魔女の家は変わらずあった。まるで、この世界は何があっても変わらないのだと、笑うように。
ルウはどうしているのだろう。ケントは、思うことしかできない自分を情けなく思った。
そんな風に季節がいくつか巡ったある日のことである。
いつものように魔女の家を見上げて、ケントは目の前の塀に目をやった。
あ、と、ケントは思った。
塀の上に施された装飾が、すぐ手の届くところにある。
ケントの背が、いつの間にか伸びていたのだ。時間は絶えず流れている。ケントもまた、いつまでも子どもではなかった。
恐る恐るケントは、くすんだ色をした塀に手を置いた。最初は人差し指だけ、それから、ぎゅっと手のひらを押し当てる。
何のことはない。ただの石造りの塀だ。ケントの家の壁と、そう変わらないではないか。
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