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ケントは見上げた。薄く灰色の雲が広がる空の下、悪魔が住む城塞のように思えていた魔女の家も、よく見れば人並みの家屋敷に過ぎない。
そうでは、ないのだろうか。
そうに違いない。
だから僕は、これをきっと乗り越えられる。
ケントはそう思って、持ち物を地面に置いた。
制服のネクタイをゆるめる。
そして塀をかたちづくるレンガの段差をうまく使って塀をよじ登り、装飾を避けながら、ばさっと向こう側に落ちた。雑草だらけの庭は、ケントを湿った匂いで迎え入れてくれた。
服についた汚れを払う。
やってみれば、笑ってしまうくらいあっけないことだった。どうして今まで試すことをせず、できないと思い込んでいたのか。
そうしてケントは、とうとう魔女の家に足を踏み入れたのだ。
ケントは身をかがめながら、まず家の様子をうかがうことにした。
小さな窓がいくつかあった。ケントは慎重に、一つ一つ窓から中をのぞき込んだ。
一つだけ、開いたままの窓がある。分厚いカーテンがかかっていたが、半分だけ端に引かれていた。
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