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そっと、ケントは中をのぞいた。誰もいないようだ。ケントは窓を少し大きく開けて、慎重に音を立てないようにして侵入した。
部屋は無人だった。扉を開けて、長い廊下に出てみる。
家の中は、しんとしていた。まるで博物館みたい。命を吹き込まれたものなどここには存在しないかのようである。キシキシと鳴る床に、どうか音を出さないでくれと懇願しながら、そっとケントは歩みを進めた。
階段がある。登りきると廊下があり、さらにいくつか部屋がある。
そして、その廊下の先に、ケントは何かが床に落ちているのを見つけた。太い紐のようなものだ。髪? 部屋の中へと続いている。
ルウだ。
そこに、ルウがいる。
直感だが、ケントは確信した。あれは、ルウの髪だと思った。
だってあれはまるで、収穫の時を迎えた麦の穂のよう。暗い廊下の赤茶けた床とは対照的に、美しい光沢すら帯びている。あのようなものが、憎らしい魔女のものであるはずがない。
輝く髪に向かってケントは歩いていった。一歩ずつ、一歩ずつ。
「ルウ」
思わずケントは、声を出していた。
「ルウ。ルウ、どこにいるの」
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