怪短譚

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「忌み家」  その空き家は日常にあった。近所の人々は当たり前のように存在する空き家がいつからあるのか誰も知らなかった。  真向かいに住む80過ぎの老人は、自分の子供時代から、そこには誰も住んでいなかったと語る。  不動産屋、役所も調査したが持ち主は不明。竹藪にぐるりと囲まれ窓枠さえも木でできた木造家屋。  ある日倒壊の危険性から取り壊しが決定し、敷地に足を踏み入れた業者らは自分の足がズブズブと沈みこむ錯覚を感じ、飛び退いた。  恐れる彼らをバカバカしいと思いつつ、役所の人間は、お祓いを然るべき人に依頼。が、空き家に向かう途中に雷が直撃、その人は亡くなった。  かくしてその空き家は今も日常の中にある。  
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