貴哉は天邪鬼の意味を知らないから

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貴哉は天邪鬼の意味を知らないから

 昼休みは自然と集まって四人で食べるっていうのが俺達の暗黙のルール。  売店でパンを買って戻ると中西が弁当を広げて戸塚といちゃついてた。 「あ、貴哉~お帰り~」 「おう、今日も豪華だな」  中西は料理が好きらしく、いつも彩り鮮やかで量も戸塚の分もあるから多めで美味そうな弁当を作ってくる。  ここでうるさい早川が居ない事に気づく。 「なぁ早川は?」 「担任に呼ばれたから職員室行ったよ」 「へー、あいつも何かやらかしたのか」 「貴哉と違って説教ではないんじゃない?あはは」 「てめぇ喧嘩売ってんのか?」 「売ってないない。怒らないで♡はいあーん」 「あーんって、お前そういうの戸塚の前でヤメロ……」  楽しそうにおかずの卵焼きを俺に差し出してくるけど、戸塚のおっかねー吊り目がこっち睨んでるじゃんよ!こいつ、わざとやってねぇか? 「貴哉ってばなに甘えてるの。あーんなんて似合わないからやめときなー?」 「早川!」  売店で何か買って来たのかビニール袋を吊る下げながら戻って来た早川。とうとうこいつも俺と同じ強制退学かと思うと顔のニヤけが止まらない。 「おいお前、何やらかしたんだよ?」 「空くん、先生何の話だったのー?」 「あー、バイトやってるのバレちゃった」 「まじ?うちの学校禁止だったよね。大丈夫なの?」 「一回目だから厳重注意だけで済んだ。けどしばらくはバイト出来ねーわ」  不貞腐れながら椅子に座って買って来たパンにかぶりつく早川。確か早川のバイトって…… 「空くんのバイトって、夜のお仕事だよね?相当ヤバいんじゃないの?」 「まぁね。でも大人しくしてりゃ大丈夫でしょ。でもさー、稼げる仕事だったからしばらくは豪遊できないよー。それが残念」 「てか学校辞めて働きゃいいじゃん。何でここにいんのお前」 「そりゃ俺が居なくなったら貴哉ちゃんが寂しがるからだろ。それに、二人の邪魔にもなっちゃうじゃーん」 「じゃーんじゃねぇよ!」 「あ、本当に寂しいんだ?」 「寂しくねぇし!」 「天邪鬼」 「あ?」 「ダメだよ空くん!貴哉は天邪鬼の意味を知らないから!」 「ぷぷ、そっか。戸塚さん教えてやってよー」  確かに知らない単語だけど、馬鹿にされてるのは分かる!早川は本当にムカつく奴だ。
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