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次の日。
結局、朝方まで事は及び、寝付いた頃には起きなければならない時刻だった。
豪は午前中を休暇にしたが、玲司はそうはいかない。気に食わないと言っても、後輩の手前、こんな事情で急な休みは取りたくなかった。存外、真面目なのだ。
「少しはなまけて隙を見せた方が、後輩も楽なんじゃないのか?」
ベッドに横になったままの豪は、さっさとシャワーを浴び、着替えを済ませた玲司に呆れた様に声をかける。
「断る。俺の主義じゃない。だいたい隙なんて見せる柄じゃない。せいぜい、後輩のケツを叩く嫌な先輩を演じてやるさ」
「おいおい。変なプレイすんなよ?」
「俺は、そっちの趣味はない。またな。──豪」
去り際、サッと近寄りその唇の端にキスを落とす。元々あった無精ひげが口元にあたってチクチクした。けれど、それも男臭く好みだ。野性味があるのは嫌いじゃない。
次に会えるのはいつになるのか。
「また、連絡する…」
豪はくいと玲司を引き寄せ、さよならの挨拶にしては濃いキスを交わしてそう口にする。
「ああ」
玲司は名残り惜しさも感じつつ、そこを後にした。
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