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しかし次の日。
まだベッドでまどろむ玲司の元に、端末が着信を知らせてきた。見たことのない番号だ。
まさか──そう思いつつ応じれば。
『樺主任! 起きてます? 早速ですけど、今から出られますか?』
玲司はベッドサイドの時計に目を向けた。まだ、七時を過ぎたところだ。
「覚えてたのか…」
目頭を押さえながら、眠気を払う。
『ええ!? って、昨日の、冗談だったんですか?』
「…違う。ただどうせ、覚えていないとは思った。三十分もあれば出られるが…」
『じゃあ、一時間後に、今から言う場所に待ち合わせでいいですか? 駅の改札出た所で。よろしくです!』
朝から元気が良すぎる。ため息をつきながら、雫が指定した駅名を頭の中で反芻した。
「こんな早くに、店は開いているのか?」
『それが──開いているんです! あ、朝ご飯は抜いて来て下さいね? じゃあ、後ほど』
それで一方的に通話は切れた。
まるで嵐だ。
言われなくとも、朝飯など食べている余裕はない。ゆっくり眠ってなどいられなかった。午後には買出しに出る予定だったから、起きるつもりはあったが、休日にこんなに早く起きるのは久しぶりだった。
あいつ、普段もこんなに早く起きてるのか?
ああいった若い連中は、休日は遅くまで寝ている──と思っているのは偏見か。
とにかく、待ち合わせ時刻に遅れるのは避けたい。
玲司は気合を入れて起き上がると、シャワーを浴びるため浴室に向かった。
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