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「楓、この前も言ったけど、もう少しサラダは山形になるようにな。ホタテの上に掛けるソースもこんな感じにしてくれ。料理は全体のバランスが大事だからな」
マスターの手によって盛りつけられた前菜は、まるでキラキラとした宝石みたいに見える。ココット皿に入れられたラタトゥイユの隣にはモスグリーンとブラックのオリーブが並び、キッシュ、トマトのカプレーゼ、ホタテのカルパッチョ、アンチョビペーストが塗られたバゲット、生ハムと無花果のサラダと次々盛り付けられていく。これにパスタがつくディナープレートは数量限定で早々と売り切れてしまう。
盛りつけ終わるとマスターは腕組みをしながら、うんうんと満足そうに頷いた。
「なんでこんなに変わるんだろ……」
感嘆と落胆の混じったため息をついた私の前に、新しいプレートが置かれる。
「さあ練習、練習。俺だって昔はバイト先の店長によく怒られたんだ。こんなもん慣れだ」
発破を掛けるマスターに、私は「はい、頑張ります」とガッツポーズで返す。
「僕もプレートがいいな」
早川さんが顔も上げずに随分前の質問の返事をして、ページをめくった。
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