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空っぽのわたしと歌好きの神様
祖母の住む小さな村は米農家が多いそうだ。一人暮らしの祖母も昔は米づくりをしていて、よくうちにもお米を送ってくれた。しかし数年前に体調を崩してからは辞めてしまい、現在は家でほぼ寝たきりの状態となっている。
そんな祖母を介護するため、私と母は引っ越してきた。
「美音ちゃんは今年いくつになるんだっけ?」
「19だよ。今はまだ18だけど」
「18……? なら、豊穣祭の歌い手になれるねぇ」
「え?」
「ちょっと母さん」
「……最期に美音ちゃんの歌を聴きたいねぇ」
言いながら祖母はベッドサイドに飾られた写真立てに手を伸ばした。写っているのは幼い頃の私と、男の子のが2人。確か、10年くらい前の豊穣祭で舞台に上がった時の写真だ。
この村の豊穣祭では、歌を奉納する。神社に祀られている神様が、人の、特に子どもの歌声が好きで、歌と引き換えにその年の豊穣を約束した。という昔話が由来らしい。
米所である村では当然、米の豊作を願いたい。そこで例年、8歳が2人と10歳を1人、年齢で『米』という漢字に成る子どもを歌い手として選んでいた。だが、少子高齢化が進む中、村の子どもだけでは成り立たなくなっていた。
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