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03_きみのホイッスル音ってすごいんだね
おれもやってみよう。
そう思ってさっそくマテマテの授業のときにやってみた。
「お? なんだ? 仁多まで鼻歌?」とマテマテはこれまた苦笑いをしたけれど、構わずおれは黒板に向かった。
ムズカシイ。
意識がすぐに後ろのクラスメイトたちへ向く。恥ずかしいヤツとかヤバいヤツって思われているかも。そう思うと喉が引きつく。腹へ力を入れてチョークを握り直す。ハミングに意識を向けて数式をつづる。背後に気を配る余裕がなくなって数学の問題だけが意識へ入って来る。
解き終わるとドッと汗が噴き出した。ちょっと……気持ちいい。
これを渚はいつもやっているの?
すごいなあ。
けれど、それからしばらくして彼女は歌わなくなった。
いや、歌『え』なくなった。
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