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04_実はすごいの、マテマテじゃね?
「まじめにやれよ」
標津の尖った声が教室に響く。
「ふざけてんなよ。歌なんかうたってんなよっ」
マテマテの授業だ。
チームで数式を解いていくという独特な授業で、渚と標津は対抗チーム同士だった。その対戦中に標津が切れたのだ。
「こいつの鼻歌が邪魔で集中できない」という理由だった。
そんなに大きな歌声ではない。チョークの音のほうが大きいくらいだ。
それでも標津には苛立たしかったのだろう。
固まる渚を見てさらに標津はエスカレートする。
「そんなに楽勝なのかよ。苦労している俺がおかしい?」
教室の空気がピリリと張り詰める。
そこに「はいはい」とマテマテが手を叩いた。
「標津、いいすぎ。でも滝野、ときには人を不快にさせるかもだし、これは授業だからな。歌はちょっと控えようか」
あ、はい、と渚はうつむく。
「蓮くん、ごめん」と続けたけれど、標津は横を向いたままだ。大人げない。
……大人げないのは、おれもかも。『蓮くん』だと? そうか、渚もやつを下の名前呼びをしているのか。……同じ中学出身だから? 本当にそれだけ?
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